「俺のカネ使って何が悪い!」子の誕生後も、競艇をやめない夫 限界を迎えた妻「なんとしても離婚したい」
子どもの誕生後「もう競艇はしない」と約束したのに、貯金を使い込んでしまう夫。その妻からの相談が弁護士ドットコムに寄せられました。 夫はたびたび借金をしてまで競艇に使い込んでしまったそうです。1回目は結婚直後にカードで100万円を借り、そのわずか5カ月後に再びカードで100万円の借金を作ったため、義母に相談し返済に協力してもらいました。 その後、妻の妊娠・出産という一大イベントを経て「もう競艇はしない」と言っていた夫ですが、実は隠れて続けており、借金こそしていなかったものの、結婚後に積み立てた夫名義の貯金40万円を使い込んでいたようです。 共働きで、夫の方が収入が多いとはいえ「自分名義の貯金を使って何が悪い」と開き直る夫に愛想が尽きたか、相談者は「なんとしても離婚したい」と考えるようになりました。ギャンブルでの借金や使い込みを理由に離婚することは可能なのでしょうか。河内良弁護士に聞きました。 ●直ちに離婚の理由にはならないが…「別居」するという手も ──ギャンブルでの借金や使い込みを理由に離婚することは可能なのでしょうか。 ギャンブルを繰り返す、ギャンブルで借金したという事情は、そのことで配偶者の生活の面倒をみなくなるといったことがない限り、民法770条1項1~4号の離婚事由にはあたりません。したがって、基本的には一般条項である5号「婚姻を継続し難い重大な事由」にあたるかどうかで判断することになります。 過去の裁判例等を見ても、ギャンブルや借金が問題とされた事件では、それら以外にも、配偶者以外の異性と肉体関係を持っていた、生活費を十分に渡さなかったなど、より大きな他の理由があって、ギャンブルや借金をしている側の配偶者が有責とされたケースばかりで、自分の収入や借入可能枠の範囲内でギャンブルを繰り返しているだけの場合、直ちに離婚の理由にはならない傾向にあるようです。 ギャンブルを繰り返すことが、いわゆるギャンブル依存症だとして、民法770条1項4号の精神病離婚に該当すると主張することも考えられますが、伝統的には、この「精神病」とは、統合失調症のようなものを指すとされているので、やはり難しそうです。 今回のケースでも、借金の額が大きくなり、もはや妻への生活費の支払いが不可能といえる事態に至っていないと、裁判離婚は難しいように思われます。 ──今回のようなケースは必ずしも珍しくないように思われますが、今後の生活や離婚に向けて備えておくべきことは何でしょうか。 必ずしも配偶者に有責原因があるとはいえないケースでも、別居が長期間継続すると、離婚が認められやすくなります。 さらに、今回のようなケースで、別居後に夫の有責原因を主張したいと考えているのであれば、弁護士に相談したうえで、別居する理由が夫のギャンブル癖・借金癖だという証拠(日記をつける、ギャンブルや借金について問い詰めた際の会話の録音、夫からの謝罪文など)を一定程度確保し、別居を敢行するなど周到な用意が必要になろうと思います。 いずれにせよ、離婚や別居の意思を配偶者に示すより前に、まずは弁護士に相談することをお勧めします。 【取材協力弁護士】 河内 良(かわち・りょう)弁護士 大学時代は新聞奨学生として過ごし、平成18年に旧司法試験に合格。平成28年3月に独立した。趣味はドライブと温泉めぐり。 事務所名:河内良法律事務所 事務所URL:http://www.kawachiryo-law.jp
弁護士ドットコムニュース編集部