広がる市販薬の乱用~若者の薬物依存症が深刻化~
◇痛みを抱えた人への支援を
薬物依存を抱える若者に対して、すぐにやめさせようとする性急な対応は、かえって事態を深刻化しかねない。つらさを緩和するために薬を服用しているので、いったん依存症に陥った患者が離脱をするのは簡単なことではない。無理に断薬した後で、自殺したケースもある。「ダメ。ゼッタイ」というキャッチコピーがあるが、このような脅しは無意味などころか、かえって逆効果になることもある。 問題はクスリというモノだけではない。痛みを抱えた人の支援こそが大切だ。周囲の大人が若者のSOSに気付くこと。その上で、頭ごなしに「何バカなことやっているんだ」という処罰的な対応ではなく、「何があったの?」と寄り添い、耳を傾けることが必要だ。(ジャーナリスト・中山あゆみ)
松本俊彦(まつもと・としひこ) 1993年佐賀医科大学医学部卒業、2000年横浜市立大学医学部付属病院精神科助手、03年医学博士、同精神医学教室医局長、04年国立精神・神経センター精神保健研究所司法精神医学研究部専門医療・社会復帰研究室長、07年同研究所薬物依存研究部室長、15年同研究所薬物依存研究部長、17年薬物依存症センター長併任。「世界一やさしい依存症入門 やめられないのは誰かのせい?」(河出書房新社)など著書多数。