焼肉店の倒産件数が“過去最多”になったワケ。お店が増えすぎて「値上げもできない」
増えすぎた焼肉店
焼肉の市場規模は、店舗数22,000店、年商約1兆2,000億円(2020年、日本フードサービス協会)と推計されている。 焼肉は昔から絶対的な存在感があり、ハレの場によく使われる。お祝いで連れて行って欲しい店ランキングでは常に上位だ。 コロナ禍での外出制限では、焼肉はテーブルごとに吸気ダクトが備えられた店内設備が「換気がいい=3密回避」とのイメージが定着して安心できる外食であると評価された。 そこに、低迷していた居酒屋などからの業態転換も多く、今となっては店が増えすぎたことによる、オーバーストア状態も経営不振の原因である。以上、食肉価格の高騰・競争激化・値上げが困難の三重苦で、焼肉店の経営環境は厳しさが続くとみられる。
原価高騰は食肉だけにとどまらない
食べ放題を中心に多店舗展開する大手は、干ばつなど供給要因や為替要因から輸入肉(牛豚)の仕入れ額の上昇、食べ放題を実施する店は輸入牛を使用するのが通常だ。 以前は、牛肉だけの注文が集中すると原価的に厳しいから、豚肉にシフトさせるようメニューを工夫していたが、その豚肉さえも高騰中だ。早く麺飯類を食べてお腹を膨らまして欲しいが、それは別腹という客も多く、また、焼肉を食べにきているから肉を食べねばと、そう簡単に店の思惑通りにいかない。 最近は、ご飯の仕入れ値も上がっている。肉類の高騰からしたらダメージは小さいかもしれないが、焼肉には白米がよく合うから、この令和の米騒動は店にしては困った問題だ。
配膳ロボットの活用やDX化の推進でコスト削減
飲食店のKPI(重要業績評価指標)はFL比率(材料費と人件費の比率)であり、利益を上げるためには、人件費管理も重要だ。最低賃金も10月から50円上がり、社会保険の適用も拡大され、人件費の上昇は待ったなしだ。 大手焼肉店は配膳ロボット(配膳ロボットは標準型で月額リース料は33,250円、1日12時間×30日稼働で時給92円となる)を活用し、人手不足や人件費抑制策に対応している。 その他の販売管理費に於いても、各店がDXを推進しており、客も慣れてきたようで別段の違和感はなさそうだ。案内の自動化、注文やメニューブックもデジタル化、セルフレジ、等を巧みに業務プロセスの中に取り入れている。 こういったDX化の推進で各店が経営効率を競い合って、大胆な値上げによる客離れを回避している。そもそも焼肉は、調理のメインである「焼く」をお客さんに任せることと、一品メニューを簡単メニューにすることで、職人が必要がなく、コックレスの仕組みを確立して人件費を抑制できる特性がある。 職人の高い給料が不必要な分を原価に充当しているから、焼肉食べ放題は費用構造的に成り立っているものだ。しかし、最近の高騰するその他経費、水光熱費の高騰、などで利益が削られ、薄利多売になっているのが実情のようだ。そういった内部環境の中、各店が利益創出のために創意工夫している。