小石が1個、2個、…7個「四角形に並べられるのは、どれでしょう」…?「素数」と「合成数」の分類が、じつにシンプルだった
どのように分解しても、出てくる素数は一通りだけ
自然数を素数の積に分解することを素因数分解といいます。 たとえば、 360=2×2×2×3×3×5 のように表し、これが360の素因数分解です。 ここで重要なのは分解の一意性(ただ一通りであること)です。これは素因数分解の一意性といいます。 360=2×2×2×3×3×5 360=10×36=5×2×4×9=5×2×2×2×3×3 =2×2×2×3×3×5 360=180×2=90×2×2=3×30×2×2 =3×3×10×2×2=3×3×2×5×2×2 =2×2×2×3×3×5 どのように分解していっても、素数2が3個、素数3が2個、素数5が1個ということは変わらないわけです。これがただ一通り(一意)であるという意味です。 一意性を厳密に証明したのは、後のドイツの数学者カール・フリードリヒ・ガウス(1777~1855)のようです。 掛け算という演算に関しては、素数は自然数を構成する素(もと)になる数であるということです。これがすべての自然数で成立する基本定理というわけです。 物理や化学では基本粒子や元素などを調べ、その個数や組み合わせが重要な意味を持ちます。クオークという基本粒子の数を予言した益川敏英さん(故人)と小林誠さんがノーベル物理学賞を受賞されたのは記憶に新しいところです。 そこで、素数に関する古代の話を紹介しておきましょう。『素数物語 アイディアの饗宴』(中村滋著、岩波書店、2019)によると、古代ギリシャの人は次のように小石を並べる問題を考えたようです。
どのような自然数のときに、正方形や長方形に並べられるか?
正方形や長方形の形に並べられるのはどのような自然数の場合であるかという問題です。 ---------- 1 : 〇 2 : 〇 〇 3 : 〇 〇 〇 4 : 〇 〇 〇 〇 5 : 〇 〇 〇 〇 〇 6 : 〇 〇 〇 〇 〇 〇 7 : 〇 〇 〇 〇 〇 〇 〇 … ---------- という具合です。 このとき、1, 2, 3, 5, 7は正方形や長方形にできない数なので、第一の数と呼んだということです。これをいまは1を除いて素数と呼んでいるわけです。 一方で、4, 6は正方形や長方形にできる数です。これを第二の数と呼んだということです。いまは合成数と呼んでいます。その理由は、4, 6というのは、この図形の小石の総数を求めるのに掛け算が使えるからです。 4は横に2個あり縦に2個あり、2×2です。 6は横に3個あり縦に2個あり、2×3です。 第一の数の2でも1×2となりますが、これはすべての数にいえる性質なので、掛け算で自然数を特徴づけることにはなりません。 こうして、正方形や長方形に並ぶ場合は、1以外の数の積に書けるので合成数といい、そうでない場合は1×2のようにしか書けないので素数というわけです。 このように、自然数は合成数と素数の2種類の数として分類されます。 なぜ、正方形や長方形に並べることを考えたのでしょう。 古代文明では、その発祥の古くから数を使っていました。 それは実用上どうしても必要であったからです。必要は発明の母ということです。 ところが、ある時期から、上に述べたように、実用性とは別に数そのものを探究する人々が現れました。続いて、実用性とは別に、数そのものを探究した人々の登場譚をご紹介しましょう。じつは、はるか遠い時代にはじまった数そのもの研究が、データ時代である現代の暗号法につながっているのです。 ---------- 学びなおし! 数学 代数・解析編 なっとくする数学キーワード29 ロングセラー『なっとくする数学記号』の著者にして、数学教育を知り尽くした専門家だから書けた、「学びなおし」の決定版! ----------
黒木 哲徳(福井大学名誉教授)
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