クルド人民兵組織、国防省下での旧反体制派統合に合意せず シリアでなお分断続く恐れも
【カイロ=佐藤貴生】アサド政権が崩壊したシリアで、暫定政府は旧反体制派が解散して国防省の下で統合することに合意したと発表した。ロイター通信が24日伝えた。ただ、中東の衛星テレビ局アルジャジーラによると、少数民族クルド人主体の民兵組織「シリア民主軍(SDF)」は合意に加わっておらず、国家の分断が続く恐れがある。 暫定政府を主導するイスラム過激派「シリア解放機構(HTS)」のアハマド・シャラア(通称ジャウラニ)氏は少数民族にも平等の権利を保証すると表明しており、衝突の激化を回避して国民統合を実現できるかが焦点となっている。 シリア北東部を実効支配するSDFは米軍と連携し、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国(IS)」の掃討に貢献した。一方、トルコは自国内の非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」の分派だとしてSDFを敵視する。 トルコが支援する勢力は同国国境沿いのシリア北部地域を制圧しており、アサド政権崩壊後はSDFとの間で対立が表面化している。国連のペデルセン担当特使は23日、緊張を緩和できなければ「劇的な結果」がシリア全土に及びかねないとして、対話による解決を強く求めた。 24日にはアサド政権崩壊後初めてのクリスマスイブの礼拝が行われ、HTSが警備する教会に少数派のキリスト教徒が集まった。ただ、中部ハマ郊外の町の中心部に設置されたクリスマスツリーを覆面した者たちが燃やす映像が交流サイト(SNS)を通じて拡散され、首都ダマスカスでは抗議デモも行われた。ハマでは何者かがキリスト教会に発砲して乱入する事件も起きたもようで、多民族国家の再建の難しさを物語っている。