「寝ても寝なくてもお金入ってこない」信用金庫職員→クライマー・大嶋あやのが味わった失業不安と夢を追う困難さ、越えた秘訣は凪のような心
プロのクライマーから一転、突然の契約解除
決断をした大嶋さんの元に大きなチャンスが到来します。プロのクライマーとしての契約先が見つかり、クライミングを仕事にすることに成功したのです。 しかし、「人生最高潮でした」と歓喜に沸いたのも束の間、約半年後には契約解除を言い渡されてしまいます。そこで大嶋さんは初めて、正社員としてのあてがなくなる事態に直面しました。お金がない、遠征にも行けない――。不安で眠れない日々を過ごす中、声をかけてくれたのは同棲中のパートナーでした。
「『一個仕事失っても死なないでしょ。寝なくても寝てもお金入ってこないよ』って言われて、たしかにそうだなと思いました。悪い時って自分で流れを変えようとしても変わらないから、今自分が置かれている流れに身を任せる。何とかなるって思えるようになりました」 ピンチの時こそ凪のような心で。大嶋さんは何もしない時間をつくって趣味をしたり、いろいろな人に会いにいく方向に舵を切ります。その結果、目標ややりたいことに賛同し、助けてくれる仲間に出会うことができました。 「私が挑戦し続けたSASUKEもなかなか反り立つ壁(1stステージ最後の難関)が突破できなくて、ネットで叩かれて辞めようか悩んでいたんですけど、仲間やスタッフのみなさんの『もう少しやってみたら?』っていう声に押されて、続けたらクリアできました。悪い時にもがいても沼にハマっていくだけなので、まわりの声を聞いたり流れに乗ることはすごく大事だと実感しましたね」 現在はキッズパーソナルトレーナーとしての仕事も軌道に乗り、生活の基盤も安定してきました。2024年は目標であるワールドカップに向け勝負の一年。かつて味わった困難も力に変え、大嶋さんは世界への挑戦を続けていきます。
文/森本雄大 写真提供/大嶋あやの