川口市・蕨市の「在日クルド人」に対する名誉毀損を問う訴訟が提起 SNSで増幅される「ヘイト」を訴える
「子どもたちがいじめに遭っている」在日クルド人たちの訴え
会見には、一般社団法人日本クルド文化協会の事務局長のワッカス・チョーラクさんや、同協会の代表理事のシカン・ワッカスさんも参加した。 「日本は、国際連盟で人種差別撤廃を訴えた世界最初の国です。礼儀正しく、清潔で思いやり深い日本人を、我々クルド民族だけでなくアジアの民族もみながアジアのリーダー国として日本を尊敬していると思います。頼りにしている民族は、我々クルド民族だけではありません。」(ワッカス・チョーラクさん) 原告らがとくに問題視しているのは、SNSの投稿が原因で、在日クルド人の子どもが学校で同級生から「国に帰れ」と言われるなどのいじめ被害を受けるようになったことだ。 クルド人男性と結婚した日本人女性は、学校の放課後に夫の親戚の子どもと一緒にいるところを写真にとられ、「学校にちゃんと通わせていない」と書かれたという。 また、会見に参加したクルド人男性は、住所や経営する会社の名称・所在地を拡散される被害を受けた。 「私たちクルド人としては、石井さんに何もしたことがない。なぜ子どもたちの写真を撮ったり、デマを流したりするのか。すごく心配だ。“なぜクルド人だけ?”ということも、すごく大きな疑問として抱いている」(原告のクルド人女性)
「川口市・蕨市のクルド人問題」の背景事情
2月18日、右派系団体「日の丸街宣倶楽部」が蕨駅前で「自爆テロを支援するクルド協会は日本に要らない!」と題するデモ行進を行い、それに対して日本人やクルド人などが集まったカウンター・デモが行われた。 同日、石井氏はこのカウンター活動の一部を映した動画を含む投稿を引用リツイートしながら、「おい、クルド人、29秒から「日本人死ね」と言っていないか」と投稿。これは「病院に行け」という発言を聞き間違えたものではないかという指摘が相次いだが、石井氏の投稿は拡散され、3月19日時点で1万4000件以上のリツイートがされている(引用リツイート含む)。 日本では2016年にヘイトスピーチ解消法(本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が制定されたが、禁止規定や罰則はない。 また、一部の自治体では独自にヘイトスピーチ規制条例が設けられているが、そのうち罰則規定があるのは、現時点で川崎市の「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」のみだ(50万円以下の罰金)。 会見の2日前の3月17日にも、川口駅前で「日の丸街宣倶楽部」による街宣行動とカウンター・デモが行われた。 会見では、一部の新聞が「川口市民からのもの」とされる真偽不明の通報を、真実性を検証せずにそのまま報道しているという問題も指摘された。 今回の訴訟は、川口市や蕨市に限らず、日本全体の多文化共生政策に一石を投じるものとなるだろう。