レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 高級SUVはブランド成長の「金の卵」 比較試乗(1)
落ち着きを増した艷やかなスタイリング
レンジローバー・スポーツは、徹底的にフラッシュサーフェイス化された、艷やかなボディが目を引く。上質な素材を贅沢に使用しつつ、シンプルな造形のインテリアも好印象。デザインに敏感な人の共感を得そうだ。 美しいだけでなく、フォルムは凛々しい。外から眺めただけでも機能的だとわかり、あらゆる条件へ対応できそうに思える。また、これ見よがしだった先代のSVRと異なり、やや悪趣味なカスタムから距離を置こうとしたようにも映る。 洗練されたスタイリングは、オーバーフィンチ社やカーンデザイン社などが提供する、ボディキットを受け付けない。そのかわり、別のターゲット層を誘惑できるだろう。ランドローバーは、密かにリセットボタンを押したのかも。 車内空間は、カイエン・ターボより長く高いだけに、ゆとりを感じる。後席側の空間はほどほどだが、荷室は明らかに大きい。高さがあり、カイエン・クーペでは厳しい荷物も簡単に飲み込める。大型犬のケージも問題なく載せられる。 カイエン・ターボは、最新のデジタル技術と有能な電動パワートレインで、現代性が追求されている。ダッシュボードにはモニターが整列し、ターボ E-ハイブリッドには、740psを発揮するプラグイン・ハイブリッドが搭載される。 GTデザインのアルミホイールと、カーボンファイバー製ルーフ、エアロキット、大きく口を開いたフロントバンパーがスポーティ。レンジローバー・スポーツ SV以上に速く見える。大きなクルマへ抵抗がなければ。
比較的近いシャシー技術 異なる考え方
それでは実際の走りは? 先ほどリセットボタンが押されたと表現したレンジローバー・スポーツだが、動的特性でもワイルド感は沈められた。従来以上に多様な能力の獲得へ、焦点は向けられたようだ。 パワートレインの電動化は別として、この2台のシャシー技術は比較的近い。どちらもマルチチャンバーのエアサスペンションが備わり、後輪操舵システムが用意されている。トルクベクタリング機能付きのリアデフで、大パワーを受け止める。 ところが、姿勢制御に対する考え方は異なる。ランドローバー・スポーツが実装する、6Dインターリンク・アダプティブダンピング・システムは新技術で、ボディの傾きを抑えるアンチロールバーを不要としている。 対してカイエン・ターボのPDCC、ポルシェ・ダイナミックシャシー・コントロールは、スポーティなドライブモードやコーナリング時に、アンチロールバーがボディロールを抑制。優れた操縦性を実現する。 しかし、コンフォート・モードでの直進時やオフロードでは、実質的にアンチロールバーはサスペンションから分離。条件次第では、しなやかな足さばきを叶えている。 タイヤは、レンジローバー・スポーツ SVがオールシーズン。あらゆる路面へ対応させようとする、ランドローバーの意志が現れている。 カイエン・ターボは、オンロード用のピレリPゼロ。オプションで、ハイグリップなPゼロ・コルサも指定できる。ポルシェの狙いを物語る設定だ。 この続きは、レンジローバー・スポーツ x ポルシェ・カイエン 比較試乗(2)にて。
マット・ソーンダース(執筆) マックス・エドレストン(撮影) 中嶋健治(翻訳)