「トラガールとは呼ばれたくない」両親から「せめて高校は出てほしい」と言われても諦めず、大型トラックドライバーになる夢を叶えたZ世代ギャルドライバー
“トラガール”とは呼ばないで
――これまでに事故の経験は? 大きな事故はないですけど、こすったことはありますし、割り込まれて強めにブレーキを踏んでしまったことで荷物が破損してしまったこともありました…。 ――それは不可抗力ですよね。 いや私が悪いんです。割り込まれることも想定して車間距離を空けておかなきゃダメなんですよ。もちろん車にぶつかるような車間では走ってはいませんが、積んでいる荷物にダメージを与えてしまってはプロ失格です。 ――女性ドライバーを増やそうと国土交通省が推進している『トラガール促進プロジェクト』が話題になっていますが、それについてはどう思われますか。 入り口はトラガールに憧れてでも、なんでもいいんです。でも「私のことをトラガールとは呼ばないで」と思っています。 ――どうしてですか? トラガールと呼ばれる女の子たちって、自撮りをSNSにいっぱいあげていますよね? 私には「トラックに乗っている『自分』が好きなんだな」と思えてしまって。 私は「トラック」が好きだから、トラックに乗っている。結果的にドライバーとして仕事をしているわけだから「どこが違うの?」って思うかもしれませんが、私にとっては大きな違い。譲れない一線なんです。 ――自分のためにトラックがあるんじゃなくて、トラックに乗るために自分がいる? 私はそうです。どちらがいいとかどちらが正しいとか、そういうことじゃなくて私が彼女たちと違うというだけなんですけどね。
現実的に下道では停めるところがない
――最近ではトラックドライバーのYouTubeチャンネルも増えていますし、動画の中では日本全国の美味しいものを食べていたり、楽しいこともたくさんありそうです。 うーん…実際はそうでもないですよ(笑)。サービスエリアグルメは確かにありますが、下道を走っているときは、停められる場所が少ないこともあって、大きな駐車場があるコンビニでおにぎりかパンを購入していますね。 時間に余裕があれば別ですが、決められた時間に届けるのが仕事なので、好きなときに好きな場所で休めるわけではありません。 もちろんポジティブなことを発信してくださっているYouTuberさんたちのことは、尊敬しています。 ――動画で見るほど甘くないということですね。 でも楽しいですよ。運転中は煩わしい人間関係に悩むこともない。それが私には合っているし、好きなんです。好きな曲かけて大声で歌うこともできますしね。誰も聞いていないですから(笑)。 ――いつもどなたの曲を? ちゃんみなです。中学のときからちゃんみな一筋! 声も見た目も好きだし、言葉がやさしくて、温かくて愛がある。ちゃんみなのツアートラックドライバーになることが、わたしの次なる目標なんです。 でもライブはお金を払って観たい。そうじゃないと楽しめなくなるような気がするので。勝手に葛藤しています(笑)。 ――昨年、アーティストの布袋寅泰さんが、「ツアートラックのドライバーをリスペクトする」とコメントと写真をSNSにアップして話題になりました。いつか、長谷川さんがちゃんみなのSNSに登場する日が来るかもしれませんね。 もしもそんな奇跡が起こったら号泣ですね。夢を叶えるために頑張ります。 取材・文/工藤晋 写真/松木宏祐