銀行系の取引所、暗号資産への信頼を取り戻せるか?
顧客を知る
銀行系取引所は、暗号資産における新たな顧客層の進化する需要と期待に応えているが、現実には限られた少数のニーズに応えているだけだ。さまざまな観点から見ると、商品やアクセシビリティの面で新しいものを提供しているわけではない。 東南アジア最大の銀行DBSは、独自の暗号資産取引所を立ち上げた数少ない金融機関のひとつだ。しかし、DBSの取引所は会員制で運営されており、参加者は金融機関、企業の適格投資家、プロのマーケットメーカーに限られている。 個人投資家がDBSの取引所で取引できるのは、同行のプライベートバンキング部門などの会員組織経由に限られる。制限はさておき、DBSの人気は高まっている。銀行の声明によると、DBSにおける2022年のビットコイン(BTC)取引高は前年比で80%増加した。 当然ながら、DBSのモデルをこれほど成功させたのは、民間と公的セクターの対話を長らく好んできた都市国家シンガポールにおいて、DBSが事業を展開しているユニークなパラダイムが背景にある。強固な規制体制のもとで、銀行を通じた安全で信頼できる暗号資産取引サービスを提供する道が開かれている。
制限を活かす
今夏、EDXマーケッツ(EDX Markets)がアメリカでサービスを開始し、銀行系取引所に最も近い存在として注目を集めた。チャールズ・シュワブ(Charles Schwab)、シタデル・セキュリティーズ(Citadel Securities)、フィデリティ・デジタル・アセット(Fidelity Digital Assets)といった金融大手が支援するEDXマーケッツは、金融機関と暗号資産ネイティブの間のギャップを埋めようとしている。 ここ1年、米証券取引委員会(SEC)による監視が強化されていたが、EDXマーケッツの出現は、取り締まりの強化が相次ぐなかで明るい話題となっている。 しかし、銀行が支援する取引所が個人投資家を受け入れるようなダイナミックな変化が起こるまでは、市場は現状のままだろうという気もしている。こうした動きは、運用上の選択というよりも、規制上の障害を克服する点に関わっている。 今、暗号資産にはこれまで以上に安全性と信頼が不可欠だ。しかし、純粋に伝統的な銀行業界の評判に頼ることだけが唯一の解決策であってはならない。ブロックチェーンは本来、個人のモラルや管理に依存しない金融システムを構築することに適したテクノロジーであり、業界の精査に追われた激動の1年が過ぎ、事態が落ち着いてくるなかで、その強みが徐々に再認識されつつある。 暗号資産ネイティブの投資家向けに作られた取引所は、後発組よりもまだ優位に立っている。そして、私たち皆が同じように取り分を狙っているのであれば、銀行も列に並ぶ必要があるだろう。 ボー・バイ(Bo Bai)博士:デジタル資産プラットフォームのメタコンプ(MetaComp)と取引所MVGXの共同創業者兼エグゼクティブチェアマン。 |翻訳・編集:山口晶子、増田隆幸|画像:Shutterstock/Jonathan Weiss(CoinDeskが加工)|原文:Can Bank-Backed Exchanges Solve Crypto Trading’s Trust Problem?
CoinDesk Japan 編集部