分断と対立の時代乗り越えよう!=第64回海外日系人大会開催=日系社会のレジリエンス確認
海外日系人協会(田中克之理事長)は第64回海外日系人大会を15日から17日の3日間、総合テーマを「乗り越えよう、分断と対立の時代を!~共生の実現に貢献するニッケイ社会」として東京で開催した。会場には20カ国から175人が対面で参加した他、オンラインでは259人の視聴登録があった。 初日(15日)の開会式では、各国の国旗を手に参加者がそれぞれの居住国をアピールし、各国から寄せられたビデオメッセージでは各地の日系団体等が活動などを紹介した。 基調講演では、ジャパンハウス・サンパウロの名誉館長ルーベンス・リクペロ氏が、日本人移住者が各地で残してきた数々の功績を挙げ、日本人の持つ調和、不屈の精神、逆境に立ち向かう粘り強さなどを「レジリエンス」と表現した。 紛争と分断、核兵器の脅威などだけでなく、現在世界各地で直面している気候変動による深刻な自然災害の脅威にも、日本人移民の資質を受け継ぐ日系コミュニティこそが「レジリエンス(回復力)の文化」を持って問題克服のために貢献できるだろうと述べた。 基調講演の後には、アジア系米国人として初めて官僚を務めた故ノーマン・ミネタ氏の半生と日系アメリカ人の歴史を描いたドキュメンタリー作品「アメリカンストーリー:ノーマン・ミネタとそのレガシー」を上映。制作プロデューサーのダイアン・フカミさん(米国在住)がオンラインで質問に応じた。 初日夕刻に開催した参加者歓迎交流会(於・海運クラブ)には、秋篠宮皇嗣同妃両殿下がご臨席になり、地域ごとにわかれたテーブルを順番に回られ、40分間にわたり参加者とご歓談された。当協会の村井嘉浩会長(全国知事会会長)は、主催者挨拶の中で今大会の総合テーマに触れ、分断や対立とは相反するコミュニティ作りに努めてきたニッケイ社会の歴史を改めて振り返るとともに、「先人たちが遺された日系レガシーを踏まえ、新世代の皆様の力強いメッセージに耳を傾けたい」と語った。 大会2日目(16日)の国際シンポジウムでは「共生を実現したニッケイの活力」「共生社会に貢献するニッケイ新世代」という二つのテーマでパネルディスカッションを行い、それぞれ4人が発表を行った。 最初のパネルでは、日本人移住者の苦労や功績を振り返り語り継ぐことの大切さが再認識されたとともに、日系ではない人々が活躍する現在のニッケイ社会の様子や、在日ニッケイ社会の現状とそれを支援する取り組み、日系4世ビザの条件緩和等についても提言があった。 次のパネルでは、若い世代を中心に行われている新しい試み等についていくつかの事例が紹介された。SNSを通じた発信や、日系団体の世代交代が潤滑に行われている事例、実際に4世ビザで来日し生活している当事者からの報告、日本で暮らす日系人の社会保障についての提言など、さまざまな視点・立場から、共生の在り方が提言され議論された。 その後、ブラジル出身の映画監督・茶屋道イナラさん(ポルトガル在住)のドキュメンタリー作品「Onde as Ondas Quebram」(波が砕けるところ)」のダイジェスト版を上映した。夕刻には外務省飯倉公館にて外務大臣主催の歓迎レセプションが開催され、岩屋毅外務大臣が「分断と対立に向かう世界を融和と協調に向けるべく、日本と各国を結ぶ絆として日系人の皆様が成し遂げられてきたことを謙虚に学び、共通の目標の実現に向けてともに歩んでいきたい」と挨拶し、親しく懇談した。 大会3日目(17日)の「日系人の主張」には10人が登壇、日本で学ぶ子供たちによる日本語の発表「在日日系人スピーチ」では、三重県の県立飯野高等学校に通う生徒3人が、日本語でそれぞれ将来の夢や目標を発表。2日目に討議された内容をとりまとめた6項目からなる「大会宣言」を発表した。 この日は、尾辻秀久参議院議長主催による昼食会も開催され、尾辻議長のほか、長浜博行副議長、参議院議員の猪口邦子氏、上野通子氏、塩村あやか氏らが駆け付け参加者と交流した。