勉強嫌いの中学受験、6年の息子のイライラと暴力、妻がブチ切れた理由
自分が相当努力しなければ到達しないものに挑戦する。それは誰にとっても簡単なことではない。中学受験とはまさに親と子で挑むものだ。 【マンガ】受験生以外にも響く!中学受験を舞台とした『二月の勝者』12の名言 では勉強嫌いだけれど中学受験をしたい、という子の場合どうしたらいいか。 「勉強嫌いの息子の中学受験は、完全に親のエゴでした。でも最後に『中学受験をしてよかった』という息子の言葉を聞いてホッとしています」 こう語るのは、森将人さん。慶應大学を出た元証券ディーラーだ。「早慶でいい」と軽い気持ちで始めた中学受験だったが、「中学受験はしたいけど勉強したくない」という息子とバトルをした日もあったという。しかし最後に「中学受験をしてよかった」と言える受験はどのようなものだったのか。率直に綴る4回目は「お金と不安」について伝えている。前編では「課金ゲーム」と言われるような、つい不安から様々にお金を使う意味を体感した話をお伝えした。 後編では6年生の息子のイライラがどのように表れていったかを伝える。
「今日はいくらだった?」
家庭教師の授業がはじまったことで孝多が気にしたのは、費用についてだった。授業が終わると、今日はいくらだった? と訊いてくる。毎回の授業料をぼやかしていうと、頭のなかで計算しているようだ。 「トーマスと合わせると、10万円以上になる?」 「1ヵ月合計すれば、それくらいになるかもしれないな」 「テレビを修理に出せたね」 孝多が壊したテレビのことだ。勉強をしないで怒られたことに腹を立てて、孝多が水筒を投げたことがあった。有機ELの画面がへこみ、それ以来わが家でテレビが映ることはなくなった。 中学受験は、子どもの反抗期と重なり合う。精神的に不安定な時期に身体が急激に成長するので、受験勉強の苛立ちを抑えきれずについ手が出てしまう。 受験勉強が山場を迎えて以来、孝多は家にあるいろんなものを壊した。その代表といえるのがテレビだ。修理すればいいのだが、わざわざテレビを直したところで勉強の邪魔になるだけだ。そう思ってしばらく放っておいた。 テレビがないと勉強は捗るのだが、世のなかのニュースに疎くなってしまう。大人はいくらでも情報源があるが、子どもに聞かせるためにと考え着いたのがFMラジオだった。 しかし音声だけの説明では、小学生が理解するには時間がかかる。 「カッとなって、暴力を振っちゃいけないことはわかっただろ」 そんなぼくの嫌味を、孝多は不貞腐れた態度で聞いていた。