「もういらないでしょ」はNG? 実家の片づけがサクサク進む話し方をスペシャリストが紹介
年老いた親が住む実家に行くと、家の中は物だらけ。もし転んでケガをしてしまったら、はたまた片付かないまま介護や相続に突入してしまったら......と考えて、何とかしたいと思っている子世代の人もいるのではないでしょうか。しかし、「片づけて」「捨てて」とストレートに伝えても、親は機嫌を損ねて仲が悪くなる一方。そんなお悩みを持つ人に今回紹介するのが、書籍『実家の片づけ 親とモメない「話し方」』。"実家片づけアドバイザー"の肩書きを持つ渡部亜矢さんが、モメずに実家を片づける方法を伝授する一冊です。 まず、実家の片づけを始める前に心に留めておきたいのが、親世代と子世代では「物」に対する考え方がまるで違うということだそうです。戦後の物がなかった時代を経験している親世代には、物を持つことが豊かさの象徴だという価値観が根付いている人も多くいます。中には「物を捨てる」という発想すらない人もいて、これは「いかにして少ない物で豊かに暮らすか」という今の時代の流れとは真逆の考え方だと言えます。 親世代と子世代でここまでギャップがある中で、どうすれば親と衝突せずに片づけを進めることができるのでしょうか。渡部さんによると、重要なポイントは「親とのコミュニケーションを見直すこと、具体的には『話し方』を変えること」(同書より)だといいます。 たとえば親子間だと遠慮なく「介護になったら困るから、いらない家具を処分しておくべきだよ」なんて口にしてしまいそうですが、これはNGワード。それよりも「地震が来たら危ないから、この家具は移動しておく?」という話し方をしたほうが、相手のプライドを傷つけず、物事を上手に進めることができます。 物に対して否定的な発言をしてしまうと、親は自分自身を否定されたように感じてしまい、かえって頑なになってしまうため、あくまでも「親のメリットを伝える」という一点集中で臨むのが得策です。ほかにも同書では「NGワード」と「使える提案フレーズ」とともに事例が豊富に紹介されていて、大変参考になります。 渡部さんいわく、「物と向き合うということは、その人の人生と向き合うことであり、物を大切にすることは、その人を大切にするということ」(同書より)。子世代から見て、いかにコスパや効率がよかろうと、正論で論破したり勝手に捨ててしまったりするのはご法度です。実家の片づけを成功させるには、物を介して親とコミュニケーションをとる「物コミュニケーション」が何より重要だと渡部さんは記します。これからの少子高齢化社会において、誰にとってもまったく無関係とはいえないライフイベントとなっていくであろう実家の片付け。一筋縄ではいかないことも多いでしょうが、話し方に気を配ることで片づけがスムーズにいくのであれば、試してみる価値はあるのではないでしょうか。 [文・鷺ノ宮やよい]