早大 相次ぐ主力欠場も7位に安堵 山口智規が2区で29年ぶり大学記録更新 一般入試組も奮闘/箱根駅伝
「とりあえずシード圏内で帰ってくることができて、ほっとしています」。早大の花田勝彦駅伝監督は、総合7位でレースを終えて、ひとまずは胸をなでおろした。 第100回箱根駅伝総合、往路、復路成績&区間賞をチェック! 前回6位のメンバーが8人残りながらも、その立役者となった経験者がスタートラインに立てなかった。前回5区区間6位の伊藤大志(3年)と6区区間3位の北村光(4年)は、それぞれ12月下旬にインフルエンザを発症。4区区間6位の佐藤航希(4年)はなかなか調子が上がらず、起用を見送ることになった。 「北村は絶好調で、区間賞を狙えるような勢いで準備をしましたが、最後の大事な練習が終わった後に熱が出てしまった。その翌日には伊藤も発熱しました。2人とも幸いにすぐ解熱し回復して、走れない状態ではなかったんですけど、実力というよりも体調の良い人を今回は使おうとメンバー編成をしました」 元々、伊藤は平地で起用するプランがあったが、今回のストロングポイントになるはずだった区間に誤算が生じた。 「選手たちに気持ちの面で余裕を持たせてあげたいと思ったので、この状況であれば行けるというタイム設定をしました。全体としては10時間57分半辺りを想定していて、総合では9番、10番争いだと思っていました」 前回以上の成績を目標に掲げて今シーズンは始まったが、直前のトラブルで指揮官はシード権争いになるのを覚悟した。 それでも、往路は「100点以上の出来だった」。特筆すべきは2区の山口智規(2年)だろう。 「1時間6分台で走れる力はあるが、初めての箱根なので、1時間7分半ぐらいでいいと思っていた」と花田監督は言うが、その想像をはるかに上回る走りを見せた。1995年に渡辺康幸(現・住友電工監督)が打ち立てた早大記録を17秒上回る1時間6分31秒で区間4位。8人を抜き4位まで押し上げた。 「渡辺康幸さんのタイムを抜きたいという気持ちもあったので、いい意味で期待を裏切れて良かったです」と山口にとっても納得の走りだった。 伊藤や、調子を落としていた石塚陽士(3年)に代わって、3区に抜擢された辻文哉(4年)も最初で最後の箱根路で指揮官の想定を上回る走りを見せた。 「往路で伊藤の代わりに誰が走るか非常に迷ったのですが、辻がよく走ってくれました」 順位を3つ下げたものの、区間7位で粘り、山口が作った流れを切らさなかった。5区でもルーキーの工藤慎作が区間6位と好走し、往路を5位で終えた。 “耐えるレース”になるのを覚悟した復路は、6区と7区を終えて、9位に順位を落としてしまう。往路から一転し、シード権争いに巻き込まれそうになったが、このピンチに奮闘したのが、早稲田にとっては欠かせない一般入学組だった。 8区の伊福陽太(3年)、10区の菅野雄太(3年)がいずれも区間5位。「伊福は、最後タスキを落としてしまって取りに戻るシーンもありましたが、全日本と同じくシード権がかかった場面で最後まで気持ちを切らさずに走ってくれた。10区の菅野は非常に調子が良かった。彼のところでシード権争いになっていたら絶対に勝てると思っていました。前半から積極的な走りで素晴らしかった」と花田監督は称える。 前回よりも1つ順位は落としはしたものの、目標を下方修正したなかで、現状で持っている力は出しただろう。 「前回経験者の中から要の選手が欠けた中での7位。総合力としてベースは上がったのかなと思います。しかし、一方で青学大は本当にすごい記録で優勝しています。我々も同じように進歩、進化していかないと、優勝争いは見えてこない。安堵はしますけれども、全然満足できる結果ではない。やはり課題はたくさんあったと思います」 地力がついているのは確認できた。だが、この結果で満足するわけにはいかない。第87回大会(2011年)以来遠ざかっている頂点を見据えて、また新たなシーズンが始まる。
和田悟志/月刊陸上競技