新国立劇場『テーバイ』構成・上演台本・演出 船岩祐太×ギリシャ悲劇研究家 山形治江による解説インタビューが到着
『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』という3つのギリシャ悲劇を再構築し、「一つの国が没落していく姿」を描く『テーバイ』が、11月7日より新国立劇場 小劇場にて開幕した。『朝日選書 ギリシャ悲劇』『ギリシャ劇大全』などを著書に持つ、ギリシャ悲劇研究家の山形治江と、『テーバイ』の構成・上演台本・演出を務める船岩祐太が、ギリシャ悲劇を解説する。 【全ての写真】ギリシャ悲劇を解説する船岩祐太と山形治江
ギリシャ悲劇はお祭りの期間にしか観られない、演劇コンテストだった
船岩 まずはギリシャ悲劇にあまりなじみのない方々に向けて、ギリシャ悲劇とはどういったものなのかを簡単に教えていただけますでしょうか? 山形 ギリシャ悲劇は、今から約2400年前、紀元前5世紀くらいに都市国家アテネで上演されました。場所は、アクロポリスの丘の斜面にあるディオニュソス劇場です。オーガナイズするのは国家ですが、実際にお金を出し、演技をするのは市民です。題材は、神話伝説。酒の神のディオニュソス、別名バッカスへの奉納行事として上演されました。現代的な感覚では、演劇は毎日でも観られると思われるかもしれませんが、当時は奉納行事でしたので、お祭りの期間しか観られません。そして、その上演方法は、演劇コンテストでした。国家の中で委員会のようなものができて、応募された中から優秀者3名が選び出され、その3名がそれぞれ4本の劇を上演して優勝を競うという形でした。もちろん、審査員も市民です。ギリシャ悲劇の題材はギリシャ神話ですが、上演されたのはアテネだけですので、正確にいうと“アテネ劇”でした。 ギリシャ神話と現存しているギリシャ悲劇は、題材的には同じものです。もともとアテネ以外の地方にあったギリシャ神話が第一の素材となり、三大悲劇作家と呼ばれる詩人たちが作品を描いて、神話となって現代まで伝わっています。ただ、一つだけ違いをあげるとすれば、ギリシャ劇はアテネで上演されていたものなので、目線が全てアテネを中心としているということです。アテネ出身の英雄が出てくると盛り上がる。そこが神話とは違うところです。