令和6年度から年金額が「年7万円」増加!? でも「実質マイナス」で老後の生活は厳しいって本当? 物価高の影響について解説
「物価高は続いているけど、年金は増えないの?」 来年度の年金の額が気になっている人は多いと思います。1月に令和6年度の年金額改定が厚生労働省から発表されました。年金額自体は前年度比2.7%増となっており、うれしい知らせのように思う人もいるでしょうが、物価高に追いついていない実質「マイナス」改定のため注意が必要です。 そこで本記事では、増額された年金の内容と、実質「マイナス」で老後生活の収支はさらに厳しくなることを解説します。また必要となる老後資金確保の対策も解説しますので、ぜひ参考にしてください。 ▼夫婦2人の老後、「生活費」はいくら必要? 年金額の平均をもとに必要な貯蓄額も解説
令和6年度の年金額改定
まず改定される令和6年度の年金額を確認しましょう。年金額が2.7%の引上げとなることを発表した厚生労働省の資料に、国民年金と厚生年金(老齢基礎年金を含む)の月額の例が示されています(図表1)。 図表1
※1 昭和31年4月1日以前生まれの方は、令和6年度の月額6万7808円(前年比+1758円) ※2 平均的な収入で40年間就業した場合の年金額(老齢厚生年金と2人分の老齢基礎年金) 厚生労働省 「令和6年度の年金額改定についてお知らせします」 引き上げられる金額は、国民年金が月1750円で年額に直すと2万1000円、厚生年金は月6001円で年額では7万2012円に上り、特に厚生年金の年間7万円以上の上がり幅はかなり大きいといえます。モデルとして示されたものは、国民年金、厚生年金とも老齢基礎年金部分が満額で、長く保険料を納めていることが前提とはいえ、年金生活者には一見ありがたいニュースのようにも思われます。
実質「マイナス」は本当か?
支給増となる年金ですが、実際には年金の増額以上に物価高による支出が増えてしまうため、実質「マイナス」です。ここでは、なぜ実質「マイナス」になるのか具体的に解説します。 ■年金の増額は物価高に追いついていない 年金は前年比2.7%増額となりましたが、物価変動率は前年比3.2%増となっています。 これらの変動で家庭の収支がどうなるのか、総務省の消費支出統計を参考に具体的に計算してみましょう。図表2は総務省の家計調査年報で示された2022年の「65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の家計収支」です。 図表2