転職面接で〈即NG判定〉…“自信満々”なエグゼクティブ人材の「自己PR」に潜む勘違い【転職のプロが解説】
自意識過剰な人と結果を出す人のマインドの違い
「いまの会社は自分を活かし切れていない」 面接官に転職理由を聞かれ、中堅メーカーの管理部長を務める46歳のCさんは堰を切ったように話し始めました。 「私の上に本部長がいて、その上には役員もいる。管理部門は私に任せてくれれば、もっと戦略的な動きや組織マネジメントにも力を入れるのですが、うちの会社は私を使いきれていません。いまは●●しかやれていませんが、与えられればもっと重要な役割を担えます。期待されれば結果を出します。御社でぜひ、いまより上の職責を任せてください」 一見、やる気に満ち溢れているようにもみえますが、面接官であるD社CFO(最高財務責任者)の心の声はどのようなものでしょうか。 「うーん、何様だ? 与えられればやります? 現職で結果が出せていないことを会社のせいにするのか。これじゃあ、うちに入っても同じだろう。俺の下でやってもらうのは、ちょっと勘弁してほしいな」 このケースも残念。面接はこの後も続きますが、実質的にはこの段階でCさんのNGは確定していました。 「与えられればやります」も、「自分はできる人材だ」という自意識が強い転職希望者がよく口にする共通ワードです。結果を出してきた人、本当の意味で自信のある人は、このようには言いません(というか、こうした思考や行動をしません)。 常に実績を語り、今後チャレンジしたいことを語るのです。 自意識過剰な人が「まず機会を与えられる・期待される→やる・成果を出す」という思考なのに対して、結果を出してきた人は「やる・成果を出す→さらなる機会を与えられる・期待される」と、正反対の考えをします。このベクトルの違いは、とくにマネジメントやリーダーとしての転職希望者を「売れない人材」と「売れる人材」に大きく二分します。
経営者には忌避される…「実力ある内定ゲッター」の勘違い
「現在、内定を2社いただいていまして」 「いま一歩条件が満たされず辞退しました」 こんな話を切り出す転職活動中のエグゼクティブも少なからずいます。ネット系企業数社を渡り歩き、現在41歳でマーケティング部長を務めるFさんもその1人。 「なので、御社のオファーも来週中にいただけるとありがたいです」 成長中のベンチャーであるG社社長の心の声は、「おいおい、オファーが出る前に、自分が最終選択したい企業かどうか判断つかないのか。うちで仮にオファーに至ったとしても、気持ち良く意思決定するとは思えないな」 結果は言わずもがな。いくつも内定が出ているというのに残念です。 このタイプは、職務の専門性やスキルにおいては非常に力がありますが、問われるのはオーナーシップを持って自社の組織をけん引してくれるか否か。つまり、リーダーとしての資質やマインドです。入社後、責任者クラスなら必ず直面するタフな事象に遭遇した際に、奮闘して乗り越えてくれる人か、まっ先に逃げ出す(また他社に転職していく)人かが問われるのです。 他意なく内定ゲッター的な動きをする人は、こうしたコミットメント意識が希薄な確率が高いため、見る目のある経営者や人事責任者からは忌避されます。 以上、3つの事例に共通するのは「自分には価値がある。それを応募先でも認めてほしい」という意識が転職活動で過剰に出てしまい、結果として応募先企業に嫌われるという構造です。 受け入れる企業側は、「自分ファースト」なナルシストを自社の経営幹部・エグゼクティブとして採用したいとは思いません。「自分への評価(承認)ではなく、他者への貢献軸」でしっかり判断、行動するエグゼクティブが、転職先の新天地においても活躍し、結果として遇されることになります。 転職活動で「おかしいな。こんなはずではないのに」という状況が続いているエグゼクティブは、この罠にはまっている可能性があります。自身の言動を振り返り、軌道修正を試みるべきかもしれません。
井上 和幸