大阪都構想は消えても政令都市の「二重行政」は消えない
橋下氏の手法もマイナスに
しかし、攻撃的で強引な手法がマイナスに働いた面も大きい。都構想に異論を持つ人たちとの話し合いがなされず、議論が深まらなかったのである。都構想という処方箋の内容をしっかり吟味する必要があるし、そもそも考えられる処方箋は一つではない。多様な人たちとの話し合いが欠落したままの住民投票となった。 もちろん、「都構想ノー」の一点だけで結束した自民・公明・民主・共産の反対派もいただけない。疲弊する地域を改善する処方箋、つまり、別の選択肢を市民に示さず、橋下維新への反撃に終始した。政治家として怠慢だったと言わざるを得ない。 17日の記者会見で政界引退の意向を表明した橋下市長は、「大阪市民は最も政治行政に精通した市民だと思う」と語った。たしかに、今の日本で自分たちが住むまちの現状と未来について最も真剣に考えているのは、大阪市民であろう。行政にアレコレ要求するばかりの市民が減っていくことが、大阪再生への確実な一歩となるのではないだろうか。 (地方自治ジャーナリスト・相川俊英)
■相川俊英(あいかわ・としひで) 1956年群馬県生まれ。地方自治ジャーナリスト、早稲田大学法学部卒。地方自治をテーマに全国各地を取材し、雑誌やテレビ、インターネットのニュースサイトなどに記事を発表している。主な著書に「トンデモ地方議員の問題」(ディスカヴァー携書)、「反骨の市町村 国に頼るからバカを見る」(講談社)がある