拡大するヘルステック 悩み緩和し健康状態の向上へ 世界は何を示す?
毎年、米ラスベガスで開催される世界最大級のエレクトロニクスショー「CES」。今年は1月9~12日に開かれ、“迫る未来”を私たちに示してくれた。 モビリティー同様、近年のCESで大きな柱になっているのがヘルスケア分野だ。 米大手のアボットが一昨年の基調講演に、この分野の企業トップとして初めて登壇し、存在感を高めている。同社が手掛けるバイオセンサーをはじめIoT技術を使ってのモニタリングが普及し、関連デバイスも広がっている。人工知能(AI)技術の活用も進む。 今回もこうした製品や技術の発表が相次いだ。検査やケアを手軽にできたり、遠隔診療などを簡単に実現したりと、「より易しく」「より遠くへ」を意識したソリューションが目立つ。コロナ禍で顕在化した、地域や世代などに伴う医療のデバイド(格差)を埋める取り組みだ。 全米民生技術協会(CTA)によると、米国内の女性の健康に関する主な課題の1位は高額な医療サービスという。背景には、医療財政や家計の事情もある。そんな中、個人のヘルスケアのハードルを下げるヘルステック、関連技術に期待がかかる。
●日系勢に期待
ヘルスケア分野は、素材やデバイスの技術に優れた日本企業が一層貢献できる分野でもある。ジャパンディスプレイ(JDI)は名古屋大のブースに参画し、遠隔診療を支援する透明ディスプレーをデモした。また、SMKはスマート衣料に活用できる高機能なコネクターなどを展開した。 日本のスタートアップからも続々とヘルステック関連の出品があった。 昨年に引き続き出展した、大阪ヒートクール(大阪府箕面市)は、ペルチェ素子による温度差を利用し、皮膚を傷つけずにかゆみを軽減する製品を出品した。消費電力を抑えたり温度を切り替えたり、ペルチェ素子の制御を工夫している。今回出品した製品は、2024年中に日本で発売予定。 大阪大学発のCool Flashは、更年期に多くみられるホットフラッシュの症状を治療する、電気を使わない製品を披露した。神経に刺激を与えることで、落ち着かせる仕組み。現在治験中で、4年後を目安に今後医療機器としてローンチを目指す。 更年期を迎えた働く女性を後押しすることに加え、がん治療などでホルモンバランスの乱れからホットフラッシュに悩む人を減らしたいという思いも持つ。