全米で錦織以外にもう一人いた日本人ベスト4 綿貫陽介の可能性とは?
理想のテニスを追いたい気持ちは、常に心のどこかに或る。 そのような葛藤からか、「大会途中から、自分のテニスがバラけ始めていたのを感じていた」とも言った。さらには、“18歳以下”という規制の中で手にした2位という成績が、単なる数字でしかないことをも、彼は強く自覚している。1歳上や同期には、既に大人の世界に身を浸し、グランドスラムで活躍する選手たちが居る。ジュニアの世界でも、自分より年下の選手たちが大きなタイトルを手にしている。「彼らを相手に、自分がやっていけるのかな」。そんな不安を、綿貫は素直に口にした。 このような言葉ばかり列挙すると、それが自信の無さから出てくるように思われるかもしれないが、彼の場合は、決してそうではないだろう。 常にテニスに囲まれて育ってきた綿貫は、プロの世界の過酷な現状を冷静に理解し、自身の現在地を過大評価も過小評価もせずに把握している。幼少期から兄2人と競い合う環境に身を置いてきた彼は、自分が負けず嫌いであることにも無自覚であるほどに、実は無類の負けず嫌いだ。さらに今回の全米では、センターコートで世界2位のアンディ・マリーを倒す錦織圭の姿を見て、「自分も将来、この舞台でベスト4や決勝に行きたい」との決意を新たにした。 悩みや不安と向き合うことを恐れず、家族と話し合い、時にぶつかりながらも解決策を模索する。 テニスに対して愚直なまでに真っ直ぐな18歳は、年齢も国も関係のない実力勝負の世界へと、いよいよ飛び込んでいく。 (文責・内田暁/スポーツライター)