新型スバルBRZの進化に迫る!!! 絶滅危惧種の国産スポーツカーも“ぶつからないクルマ”へ
一部改良を受けたスバル「BRZ」は、MTモデルの運転支援装備が大幅にアップデートされた! 小川フミオがリポートする。 【写真を見る】新型BRZの詳細(35枚)
MT車ならではの制御課題
スバルといえば、楽しめるクルマづくりで知られる。いっぽうステレオカメラを使った運転支援システム「アイサイト」と呼ぶ、看板技術ゆえスバル車を選ぶひとも少なくない。 どっちも欲しいひとのために、2023年9月22日、スポーツクーペ「BRZ」(と、トヨタ「86」)のマニュアル変速機モデルに、ついにアイサイトが標準装備された。 現行BRZおよび86の発表は、2021年4月だから、ようやく、と喜ぶひとも少なくないのでは。ここではBRZを中心にアイサイトの説明をしよう。 スバルが開発を担当したアイサイトは、すでにご存知の人が多いと思うけれど、歩行者や自転車や車両との衝突回避を手助けしてくれるシステム。 最新の「バージョン3」において、その効果は「追突事故発生率0.06%」と、スバルではしている。すごい! と、あらためて感心したのは、今回のアイサイト搭載MTモデルで、衝突回避テストを体験したとき。 先行車に見立てたバリアに向かって、20km/hで、ブレーキペダルを踏まずに突っ込むテストだ。 「クラッチペダルのことは気にしないでください」と、同乗してくれたスバルの開発者に言われたとおり、運転した私が意識したのは、20km/hまで速度を上げることと、そのあとアクセルペダルに載せた足の力を抜くこと。 よく言われるのだけれど、追突のとき、アクセルペダルを踏み続けているドライバーは少ないそうだ。だいたい「あっ!」と、気づいてブレーキペダルを踏むなど減速するが、間に合わないで追突するという。 はたして、私は、アクセルペダルからほぼ足を離したまではいいが、ブレーキングしないまま、バリアへと突っ込んだ。すると、目の前いっぱいにバリアが拡がっていき、ついに「やばい!」と、思った瞬間、ガンッとブレーキがかかった。バリアとの間隔は約1m。これは設定通りという。 BRZは操縦する楽しさを前面に押し出したモデルだけれど、マニュアル変速機搭載車と同時に発表されたオートマチックモデルには、当初からアイサイトが設定されていた。 「オートマチック車で効果がしっかり検証出来たので、次はマニュアル車で、という順番です」 開発を担当したスバルのADAS(自動運転)開発部の大郷道夫は、会場でそう説明してくれた。 「マニュアル車の場合、アイサイトで急停止すると「エンストしたらどうする?」とか「停止時、自動的に車両がブレーキ保持をしたほうがいいか? するとしたら何秒が適当か?」といった課題がありました」 くわえて、衝突せずに停止したのはいいが、そのあと、自動で作動したブレーキをどのぐらい保持するのか、細かく時間も検討したとのこと。はたして、マニュアル車なので車両が動き出して接触、などという二次事故を防ぐために、一定時間、ブレーキ圧は保持される。車両側がブレーキ圧を保持している状態が続いている間、警告音が鳴っている。ドライバーはそれに気づいて、(あらためて)ブレーキペダルを踏めばよい。 いっぽう、「安全性ばかりを優先した開発ではなかった」と、スバル商品開発本部の小林正明プロジェクトジェネラルマネージャーは説明する。 「運転を楽しんでいただくスポーツカーですから、ドライバーはなるべく自然なフィールでもって運転していただきたいという思いが第一にありました。レーンチェンジとかステアリングホイール操作にはシステムが介入しないようにしています」 BRZについては、同時に「STI Sport」というスポーツグレードが追加された。魅力的なクルマなので、最後に紹介しておこう。 STIチューニングによる専用サスペンション(新採用ダンパーのダンパーを含む)により応答性の高いハンドリングを目指した仕様だ。ゴールド色のブレーキキャリパーはブレンボ製。 この足まわりは硬いだけでなく、しなやかさがセリングポイントだけあって、かなり良い。 さらに内外装も専用装備が充実。ドラミラーとルーフアンテナをブラックにしたことをはじめ、高輝度のダークメタリックの18インチ径アルミホイール装着。エアロパッケージやパフォーマンスマフラーやBBSホイールなどをオプションで注文出来る。 BRZは(86とともに)、きっと、ドライブの楽しさは継続維持されて、かつ、いざというときの安全性の高いスポーツクーペになったのだ。
文・小川フミオ 写真・安井宏充(Weekend.) 編集・稲垣邦康(GQ)