「政策保有株は売ってしまえ」 株主第一主義に反対する関経連の変化
関西経済連合会の松本正義会長(住友電気工業会長)は3日、都内で記者会見を開いた。関経連は株主だけでなく、顧客や従業員など多様な利害関係者を重視する「マルチステークホルダー」経営を提唱し、これまでコーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)に関して政策保有株式の一律縮減などに反対する姿勢を打ち出してきた。ただ市場から政策保有株の売却圧力が強まる中で今回、「保有理由のない政策投資株は売ってしまえ」と縮減を許容する考えを示した。 【関連画像】関西経済連合会の松本正義会長(写真=山下 裕之) 会見では「マルチステークホルダー資本主義の考え方・求められるコーポレートガバナンスのあり方」と称し、行き過ぎた株主第一主義を見直し、多様なステークホルダーを意識した経営にシフトすべきだとの持論を述べた。 政策保有株は日本特有のもたれ合い経営の象徴であり、資本効率を悪化させる原因となっている。アクティビスト(物言う株主)や機関投資家から縮減を求められる企業が増えており、今年の株主総会の焦点の1つだ。松本会長は「政策保有株をどうするかは経営者のセンスだ」との見方を示す。
住友電工では政策保有株を売却しており、「売却益を何に使うかを含めてマネジメントだ」と話した。合弁会社の設立など事業面の連携を目的とした保有については理解を示すものの、「株式保有は経営の意思決定プロセスであり、相手の経営にどう入っていくかを考えるべきだ。友達経営で甘えが生まれてはいけない」と訴えた。 急増している企業の自社株買いについては「中長期では設備投資や研究開発などが後退する可能性がある」との懸念を示し、ガイドラインを設けるなど一定の規律の導入を求めた。「自社株買いで(株価が上がることで)経営者はいい格好をしている」と指摘。東京証券取引所が上場企業に求める資本効率の改善や株価を意識した経営については「設備や人的資本に投資をして新しいアイデアの製品を生み出すべきだ」と主張した。 関経連はかねて上場企業の四半期開示の義務付け廃止を求めていた。今年の4月から四半期報告書が廃止された。四半期決算については決算短信に一本化されたが、こちらも「任意にすべきだ」と訴える。四半期決算短信まで廃止すれば、投資判断となる財務情報が減るとの理由から、株式市場からは反発する声が多い。松本会長は「英国やフランス、ドイツ、シンガポールは任意でも情報が出ている」と話し、義務付け廃止に向けて今後も政府に働きかけを続ける方針を示した。
阿曽村 雄太