「大声で話すな」 バスドライバー不足を解消したいなら、昭和~平成の“おっかない”ドライバーを容認せよ
昔のドライバーの振る舞い
昔、バスドライバーといえば「おっかない」というイメージがあった。 1976(昭和51)年生まれの筆者(西山敏樹、都市工学者)は、小学生の頃から路線バスに興味を持ち、よくひとりでバスに乗っていた。学生時代、1980年代から1990年代にかけては、今ほどマイクを多用し、接客に異常に気を配るドライバーはむしろ珍しかった。 【画像】えっ…! これがバスドライバーの「年収」です(計13枚) 筆者は東京で学生時代を過ごしたが、 ・5000円札や1万円札で乗ろうとする乗客を大声で注意するドライバー ・飲み物や食べ物を持ち込む乗客を叱るドライバー ・大声で話す乗客を叱るドライバー などをよく見かけた。自転車で坂道を登っている人に 「危ないから、こんなところを登るな」 と窓を開けて注意したドライバーも覚えている。また、前扉を開けて 「こんなところに駐車しちゃダメだろうが」 と大声で注意したドライバーも覚えている。今思えば、叱ったり怒ったりしたというより、 「バス利用者やバスを取り囲む一般客の間違いを正していた」 といった方が正しいかもしれない。不思議なことに、ドライバーに腹を立てる乗客や市民はおらず、渋々ながらも彼らの言葉を受け入れているようだった。それだけドライバーの立場が尊重されていたのだろう。
バスと鉄道のサービスの違い
1985(昭和60)年以降、バス利用者は徐々に減少していった。平成に入るとそれが顕著になり、バス会社はイメージアップに躍起になった。 ・案内用マイクの過剰使用 ・乗客至上主義の過剰サービス は、バス会社の意向で実施された。誤解を恐れずにいえば、バスドライバーに求められるのは 「安全運転」 である。安全運転が達成され、バスが目的地に到着すれば、最低限の目的は達成されるのだ。 鉄道車両では、運転室と車掌室は通常、乗客スペースから分離されている。また、最近は、車掌の音声案内ではなく、自動アナウンスが主流になっている。そこに過剰な乗客至上主義的サービスは存在していない。 一方、路線バスの場合、鉄道車両ほど乗客のスペースとドライバーのスペースの仕切りが明確ではなく、お互いに気を遣いやすい。サービスの悪さも目立ちやすく、指摘もしやすい。意外と、路線バスでも鉄道車両のように 「ドライバーと乗客の間に明確な仕切りを作ること」 が、カスタマーハラスメントを減らすのに効果的な印象を受ける。そうすれば、ドライバーも安全運転に専念しやすくなるだろう。