高校生の子どもに対する扶養控除が38万円から25万円に! なぜ、そうなるかを考える
令和5年12月14日、政府与党による「令和6年度税制改正大綱」が決定されました。令和6年1月に開催される国会で、税制改正が正式に可決・成立するかと思いますが、このタイミングで内容を確認していきます。 本記事では、扶養控除の見直しについて取り上げます。
児童手当と扶養控除の見直し
報道などで耳にしている方も多いかもしれませんが、「令和6年度税制改正大綱」のなかでも扶養控除の見直しは、特に子育て世帯にとって十分に注意を払う必要がある内容となっています。 児童手当の見直しについては、今回の税制改正大綱ではなく、令和6年10月分からの実施がすでに予定されています。これを踏まえて、令和6年度の税制改正として扶養控除の見直しが国会で審議されることになります。そのため、こうした流れをまず押さえるようにしましょう。 ちなみに児童手当の見直しは、支給対象を高校生まで延長し、第3子以降の支給額を3万円に引き上げるほか、所得制限の撤廃がポイントとなっています。
扶養控除の見直しの変遷
国としては児童手当を拡充する代わりに、扶養控除を見直してバランスを取るようです。ここで扶養控除の変遷について概観しておきます。 子どもに係る扶養控除は、平成23年分の所得税から年少扶養親族(16歳未満)に対する扶養控除(38万円)が廃止されています。また、それまで特別扶養親族であった16~18歳までは一般の控除対象扶養親族となり、扶養控除の上乗せ部分(25万円)が廃止されました。そして、特定扶養親族の範囲は19~23歳未満となっています。 図表1 ●平成23年分の所得税から適用された扶養控除の改正
出典:国税庁 「平成23年分 所得税改正のあらまし」 これらは当時の政権下で創設された子ども手当が、それまでの児童手当から所得制限を撤廃するなど内容を拡充し、15歳までの子どもに対しては所得控除(扶養控除)ではなく、手当での対応に切り替えたことによります。 つまり、子ども手当として従来の児童手当の内容を改善した結果、それに伴って扶養控除も見直しが行われました。なお、子ども手当は平成24年度から再び児童手当となり、所得制限が設けられています。 現行では子どもに係る扶養控除について、一般の控除対象扶養親族(16~18歳まで)に対して38万円、特定扶養親族(19~23歳未満)に対しては63万円となっていますが、こうした経緯を踏まえ、令和6年度税制改正大綱では扶養控除の見直しが図られようとしています。 具体的には、現行の一般の控除対象扶養親族に対する扶養控除(38万円)について、16~18歳までは平成23年に廃止された扶養控除の上乗せ部分(25万円)を復元するというものです。 報道では、これをもって高校生の子どもに対する扶養控除が38万円から25万円に減額されるといわれることがあります。しかし、十分に留意しておく必要があるのは、所得制限の撤廃や高校生まで支給対象を拡大する児童手当の改善に、扶養控除の見直しが伴っているという点です。