柏FW細谷真大が見せる上昇気流の兆し 頼れるパリ五輪世代エースが示し続ける最前線での脅威【コラム】
シーズン序盤はゴールを決められず苦しみを味わった
湘南ベルマーレから2-1で逆転勝利をもぎ取った、15日の第14節後に残した言葉。この試合で細谷は後半32分の木下の同点ゴールをアシストし、アディショナルタイムには勝ち越しゴールを突き刺している。 昨シーズンは自己最多の14ゴールをマーク。得点ランキングで5位タイに名を連ねた細谷は、出場9試合目でようやく決めた今シーズン初ゴールに「フォワードとしては、やはりしんどかった」と本音も吐露している。 U-23日本代表のエースストライカーとして臨んだ、先のU-23アジアカップでも自らに矢印を向け続けた。グループリーグの全3試合に出場しながら無得点。それでも開催国カタールとの準々決勝で大岩剛監督から先発を託され、2-2で迎えた延長前半11分に決勝ゴールを決めて雄叫びをあげた。 勝てばパリ五輪出場が決まるイラクとの準決勝でも先発した細谷は、前半28分に技ありの先制ゴールを流し込んだ。日本を8大会連続の五輪出場に導くと、ゴールこそ奪えなかったものの、ウズベキスタンとの決勝でもフル出場。チームに関わる全員が目標として共有してきたアジア王者も手土産に加えて帰国した。 U-23アジアカップで柏を離れた関係で、細谷のリーグ戦出場試合数は4つ少ない。それでも942分を数えているプレー時間は、攻撃陣のなかではMFマテウス・サヴィオの1322分に次いで長い。井原正巳監督が寄せている厚い信頼を物語る数字と言っていい。すでにキャリアハイの6ゴールをマークしている木下も、最前線でコンビを組む7つ年下の細谷へ「僕には強力な相方がいるので」と声を弾ませている。 前線で繰り返す泥臭い守備や、木下をはじめとする味方を生かす献身的なプレー。それらが評価されているのはもちろん励みになる。それでもエースストライカーと呼ばれている以上は、何よりもゴールという結果がほしい。だからこそ、惜しかったとか、あるいはあと一歩だったという言葉に細谷は背を向け続ける。 「攻撃的に出ていくところもそうですし、球際のところも含めて、前半よりよくなっていた。だからこそ、もうひとつゴールを奪えば、確実に勝ち点3を取れていた。自分の結果も含めて、チームをしっかりと勢いに乗せていきたい。次もすぐ連戦がありますし、しっかりと勝ちにこだわって、その上で自分の結果もついてくれば」 川崎戦を終えた細谷の視線は、中3日で29日に待つ、横浜F・マリノスとの未消化カードへすでに向けられていた。敵地・日産スタジアムで行われる一戦で勝てば、柏は暫定で6位に浮上する。そして、一夜明けた30日にはパリ五輪代表発表前で最後の実戦となる、U-23日本代表のアメリカ遠征メンバーが発表される。 [著者プロフィール] 藤江直人(ふじえ・なおと)/1964年、東京都渋谷区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後に産経新聞社に入社。サンケイスポーツでJリーグ発足前後のサッカー、バルセロナ及びアトランタ両夏季五輪特派員、米ニューヨーク駐在員、角川書店と共同編集で出版されたスポーツ雑誌「Sports Yeah!」編集部勤務などを経て07年からフリーに転身。サッカーを中心に幅広くスポーツの取材を行っている。サッカーのワールドカップは22年のカタール大会を含めて4大会を取材した。
(藤江直人 / Fujie Naoto)