「危険でも便利」に揺れる近隣住民 栃木県内の4種踏切巡り 「踏切内と遠回りに」 事業者は住民配慮と費用で悩み
群馬県高崎市の警報機や遮断機のない「第4種踏切」で9歳女児が死亡した電車事故を受け、栃木県内で4種踏切を利用する地域住民は8日、移動の際に近道になる「利便性」と同時に、事故に遭う「危険性」を指摘するなど、複雑な心境を口にした。一方、鉄道事業者は国の解消方針に理解を示しつつ、住民への配慮や、遮断機などを設置する費用負担の悩みも抱える。 高根沢町文挾のJR烏山線。田畑や住宅が点在する一角に、警報機や遮断機がない4種踏切がある。 「カーブで視界が悪く、電車が来ても見えづらい」 近くに住む同所、自営業阿久津政夫(あくつまさお)さん(74)は危険性を感じている。自分は利用していないが、農作業で住民に長年使われている現状を説明。踏切の閉鎖について「使う人がいるなら賛成できない」と漏らす。 同じ踏切を使う同所、農業阿久津正(あくつただし)さん(72)は「踏切がないと遠回りになってしまう」と移動時に重宝がる。見通しが良くなるよう線路沿いの草刈りをしており、「安全に残してもらえると助かる」と話す。 路線別で最も多い6カ所の4種踏切があるJR日光線。日光市和泉では、見通しのよい直線の線路上に3カ所の4種踏切がある。いずれも住民の生活や農作業時に使われている。 近くの農業女性(72)は「電車が通過する前は複数回、警笛が鳴るから危険を感じたことはない」。一方、高崎市の事故を受け「孫が犬を連れ農道を散歩することもある。今以上に気をつけたい」と言い聞かせた。 鉄道事業者は4種踏切を解消する意向を持ちながら、利用者の声とのはざまで悩む側面もある。日光市足尾に4カ所の4種踏切を持つわたらせ渓谷鉄道(群馬県みどり市)の品川知一(しながわともかず)社長は「地元からは必要との声があり決断は難しい」とこぼす。「資金面も踏まえながら地元と慎重に協議していく」と語った。 JR東日本は個別路線での方針を明らかにしていない。高崎支社の担当者は「踏切での事故ゼロ運動など、安全啓発活動も継続して進めていく」としている。