横浜DeNAのドラフト成功の裏に情報網と“読む力”
さらに横浜DeNAのドラフトの成功の裏には他球団の動きを探りながらドラフトの展望を読むという戦略がある。球界に幅広い人脈を持つ高田GMと、巨人でも編成経験があり情報網を確保している吉田氏。海千山千の2人ゆえのドラフトを読む力だ。濱口の指名には、こんな内幕があったという。 「濱口は、ヨソの球団には、そこまで評価されていないことがわかっていたので、実は、2位で取ろうと考えていた。馬力はあったけど、コントロールはアバウトだったからね。でも、1位の柳を外して外れ1位の佐々木でも抽選で負け、じゃあ濱口を1位に順位を上げようとなったんだよね」 ドラフトの本当の成果は5年後、10年後に出る。ウサギと亀のような物語なので、ここで結論を出すのは性急だが、今季だけで言えば中日の柳裕也は、怪我もあって1勝4敗、ロッテの佐々木千隼も1、2軍を行ったり来たりで防御率、4.22、4勝7敗と期待を裏切った。 今オフのドラフトでも横浜DeNAは、その独特の読みを発揮している。 「いろいろと考えた。清宮も欲しかったが、ピッチャーでは左の田嶋がよかったし、東については『ちょっと小さいね』という意見もあった。でもボールがキレる。田嶋と同じ評価。高田GMには『抽選で負けたら、おそらく東に重複するんじゃないか』という読みがあった。それならば『抽選の可能性の少ないほうに行こう』という話になった」 立命大の東克樹には楽天1本釣りの情報も流れていたが、JR東日本の左腕、田嶋大樹にはオリックス、西武の2球団の1位入札が間違いなかったため競合を避けるという戦略的なドラフトを敢行して、結果、横浜DeNAだけが単独指名に成功することになったのである。 来季、4年連続で左腕が、また即戦力になれば、もう奇跡に近い快挙だろう 71歳になるベテランスカウトは、取材の最後に、こう念を押して笑った。 「今のところ若いのが出てきてくれているけど、選手が頑張っているからだよ。ドラフトに正解なんてない。賭けだからね」 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)