【山形県】治水目的で88億円のダム造りながら堤防も整備計画もない場所を放置し浸水被害、特産のアユも激減
■ 流水型ダムに33年もかける一方、堤防未整備の場所を放置 では、せめて治水には役立っているのか。 山形県河川課によると、今年の夏に限らず、近年、最上川流域でも豪雨が頻発している。2020年7月には、2日間かけて停滞した前線により、最上川の中流域で観測史上最大の雨を記録した。河川整備計画で想定した水位を超え、4カ所(村山市、大石田町2カ所、大蔵村)で堤防を越え、堤防がなかった5カ所(新庄市、大石田町、河北町2カ所、大江町)で氾濫した。 また2022年8月には、線状降水帯による豪雨で、上流域で3カ所の雨量観測所で史上最大、3カ所の水位観測所で史上最高水位を更新した。国の管理区間では堤防1カ所(長井市)を越え、堤防がなかった4カ所(米沢市、大江町、河北町2カ所)が氾濫。県区間でも、堤防のない場所5カ所(米沢市、川西町、飯豊町小白川、飯豊町萩生、大江町)で氾濫した。 氾濫箇所と県の治水計画との関係を尋ねると、河川法に基づく整備計画さえ未策定のままで氾濫した箇所があることがわかった。つまり、山形県は、流水型ダムの完成に33年をかけた一方、堤防も整備計画もない場所を残していた。 そして今年7月25日、山形、岩手、宮城、秋田で、国管理の2水系4河川で氾濫、4県が管理する11水系34河川で氾濫。最上川水系もその一つだった。
■ 証明された「赤倉温泉専用ダム」 では、せめて今回、流水型ダムは、少しは機能したのか。7月25日の豪雨では、最上町内の観測地点で、史上最大の雨(396mm)を記録。役場によれば7月9日にも豪雨が降ったばかりで、2度続けての記録更新となった。赤倉温泉地区にも避難の呼びかけはしたというが、浸水被害はなかった。 しかし、赤倉温泉から約16キロ下流、国道47号線沿いの川の駅「ヤナ茶屋もがみ」(以後、川の駅)では、観光客の散策用の吊り橋が流出した。この吊り橋は最上小国川流水型ダムが完成する前の2018年にも流出している。 そのさらに2キロ下流の瀬見温泉でも浸水被害があった。最上町役場担当者に聞けば、「瀬見温泉までには他のところから流れてきますから」とこともなげに言う。実際、赤倉温泉から瀬見温泉までに5本以上の枝川が流れ込む。事実上、流水型ダムは赤倉温泉専用ダムだということが証明された形だ。 では、「魚にも環境に優しい」と宣伝したことはどう検証しているのか。県河川課は、年1回、「最上小国川流域環境保全協議会」(以後、協議会)を開催しており、すべての情報はウェブサイトに載せているという。