大きな瞳のしたたか者「仲間と酒やグル―でハイになってる時が一番楽しい」
ネパールの首都カトマンズにあるダルバール広場。古いチベット仏教建造物の並ぶこの一角は、人気の観光名所でもある。2009年、僕が初めてストリート・チルドレンと遭遇したのがこの広場だった。 ◇ ◇ 僕が路上で最も時間を共に過ごしたのが、クリシュナだった。ダルバート広場付近で見かけることが最も多かったし、他の子供たちと違って、グルー(接着ボンド)を吸っている時にカメラを向けてもあまり嫌がらなかった。話し方も穏やかで、攻撃的なところもない。しかし、そんな柔らかな態度とは裏腹に、クリシュナはなかなかのしたたか者だった。働くことは性に合わないのか、段ボールやボトル拾いをするところは見たことがない。要領がよく、スリや置き引きで手っ取り早く金を集めていた。
「小さかった頃は、同情を引くために、頭に偽物の傷をつけて物乞いをしてた。それからスリや置き引きもやるようになった。女性のバックを盗んだときは中に2万ルピーも入ってたよ。運が良かったな。だけど、そんなことより、仲間たちと酒やグルーでハイになってる時が一番楽しいよ」 その言葉通り、見かけるときはだいたいグルーを吸ってハイになっていた。そんな時、クリシュナの輝く大きな瞳は、ぼうっと宙をさまよい続けた。 (2010年1月/2012年8月撮影) ※この記事はフォトジャーナル<ネパールのストリートチルドレン>- 高橋邦典 第50回」の一部を抜粋したものです。