ホンダNSR250R(MC28)の都市伝説「HRCカードでパワーアップ」の真相は?
94モデル(MC28)から採用された「カードキーシステム」
電気(電装関係)にまつわる秘密や伝説が多いのも、ホンダNSR250Rの面白さである。「ハチハチでは配線を1本抜けばリミッターカットできる」というのはその代表例だが、94モデル以降のMC28には「HRCカードを挿せば劇的にパワーアップする」という都市伝説がある。 【画像32点】ホンダNSR250R(1986→1994)全年式、全カラーバリエーション、29モデルを写真で解説 しかし、このメモリーカードは当時のSP250レース用に作られたもので、内部のデータはその規定「直キャブ+チャンバー等」に沿ったものだ。さらに、3種類あるデータのうち、ふたつはAVガス(オクタン価の高いレース燃料。レシプロ航空機用)基準だ。当然ながら、通常の仕様のエンジンには効果のない無用の長物である。 MC28は純正チャンバーの形状で出力を40psに抑え、180km/hリミッターも非装備だから(最高速はギヤ比で抑制している)リミッターカット効果は得られないし、点火時期はウッドラフキーで進角させるとHRCカード同等の特性が得られるため、チャンバー交換程度ならそいれで十分。昨今のNSR事情(チューニングやパーツなど)を踏まえると、HRCカードが必要な場面はほとんどないと言えるだろう。 ■1993年末に発売された最終型ことMC28のNSR250R。スタンダードとSEが1993年11月10日発売、SPが1993年12月10日に限定1500台で発売された ■MC28のエンジン性能は最高出力40ps/9000rpm、最大トルク3.3kgm/8500rpm。数値は従来型からダウンしているが、コンピューター制御の緻密化、吸入効率を高めた新設計のキャブレター、低~中回転域重視型チャンバーの採用などが行われている ■MC28で新採用となった「PGMメモリーカード」。液晶デジタルメーターのカードリーダー部に差し込むことで、シリアル番号を照合し、主電源やコンピューターの起動、車体内蔵式ハンドルロックの解除を行う ■当初、公道での盗難防止策として導入されたカードキーシステム。PGMにアクセスするのだから、点火マップもカードキー経由で変えられるのでは?」と開発陣が気付き、別売でSPレース用のHRCカードが作られたという まとめ●モーサイ編集部 写真●八重洲出版 *当記事は八重洲出版『11万6000台以上を販売したレーサーレプリカの実像 NSR250Rその進化と軌跡』の記事を編集・再構成したものです。