熊やイノシシに襲われてけが…保険で補償されるの? 建物や農作物は保険対象? 専門家の答えは
今秋、全国各地で人の生活圏での熊の目撃や被害が相次いでいますが、熊による被害に遭った場合、保険で補償されるのでしょうか―。長野市の60代男性から本紙「声のチカラ(コエチカ)」取材班にこんな疑問が寄せられた。熊を含めた野生鳥獣全般に対象を広げ、保険の専門家などに取材してみた。 (高野雄司) 【動画】シカと衝突した車のドライブレコーダー 「あー、またやられた」
けがや物損...保険適用が多く
「保険会社や契約内容にもよりますが、野生鳥獣による人的、物損被害は生命保険や損害保険で補償の対象になるケースが多いです」。長野県内約200の損害保険代理店が加盟する県損害保険代理業協会の会長福嶋利行さん(59)=松本市=はこう説明する。
例えば、車を運転中に鹿と衝突するなどして車体に傷が付いた場合。自損事故と同じ扱いとなり、保険会社にもよるが車両保険に入っていれば、契約時に定めた修理費用などが支払われる。
ただ、車両保険を利用するため、保険会社によっては3等級下がり、保険料が5割増しになるといったデメリットがあるのも一般的な自損事故と同じだ。
建物に傷、窓ガラス割られたら火災保険で対応可能なケースも
野生鳥獣により身体に危害を加えられ、手術や入院、死亡に至った場合には、生命保険の他、通常のけがと同様、傷害保険でも治療費などが支払われる場合があるという。
福嶋さんが「知らない人も多いかもしれません」というのは建物の被害の補償。野生鳥獣に引っかかれて建物に傷が付いたり、窓ガラスを割られたりした際には、火災保険で修理費用が補償される場合がある。
農作物の減収分も一定額補償される だが、掛け金の負担が気になり未加入の農家も
野生鳥獣による農作物被害への補償はどうだろう。全国にある農業共済組合が窓口となって展開する農業共済と収入保険事業で補償される。自然災害などを含めた年間の減収分に対し、一定額を補償する仕組みで、水稲や果樹、大豆やジャガイモなどが対象。掛け金の半分は国が負担している。
県農業共済組合(長野市)によると、県内ではイノシシによる水田の踏み荒らしや、鹿やハクビシンによる果樹被害など、野生鳥獣による農業被害の補償が目立つ。収穫共済課の担当者は「特に中山間地の加入者からの要望が多い」と話す。