独立リーガーから誕生した「背番号55」井上絢登(DeNAドラフト6位)の打撃を開花させた徳島インディゴソックス「驚異のメソッド」<インディゴソックス ドラフト指名6人全員インタビュー②>
今ドラフトで史上最多の「6人同時指名」を成し遂げた四国アイランドリーグplusの徳島インディゴソックス。指名された6人の言葉からその育成力の真相に迫る。 【動画】井上のフルスイング
「壁」を打ち破った井上の本指名
「インディゴソックス同時指名6人組」の中で唯一、野手として本指名を受けたのが、横浜DeNA6位の井上 絢登(久留米商-福岡大)内野手だ。今季の四国アイランドリーグplusで井上は圧倒的な成績をみせていた。 14本塁打、39打点、打率.312、14盗塁ーー。 打点・本塁打の二冠、そしてMVPも獲得し、ついた異名は「独立のギータ」だった。 しかしながら、これまで井上のような独立リーグ出身の長距離砲にとって、ドラフト本指名の壁は高いものだった。実際、11年連続26人のNPB選手を輩出した徳島でも、強打者タイプの本指名選手はなかなか出ていない。2021年、DeNAから育成1位指名された村川凪外野手(如水館-四日市大)は俊足がウリ、強肩捕手の古市 尊捕手は育成1位で西武に。2022年は 走攻守三拍子揃ったアベレージヒッター・茶野 篤政外野手(中京-名古屋商科大)がオリックス育成4位に、 脚力に秀でた日隈 モンテル外野手(金光大阪)が西武に育成2位で指されている。いずれもクリーンナップを任されるタイプではなく、なおかつ育成指名だ。 井上はその壁を打ち破った。しかも入団するのは、12球団でも上位の打撃力を誇るDeNA。 さらに球団から用意された背番号は「55」。あの筒香 嘉智内野手(横浜)もルーキー時代に背負った「将来の強打者の証」だ。 井上は徳島での2年間を振り返る。 「僕にはそれまで打撃しかなかった。大学でプロ志望届を出してもダメでした。でも、徳島に入ったことで、自分のプレースタイルすべてがレベルアップしました。野球選手としてあらゆる面が成長できたんです」 では井上の成長の軌跡を振り返っていこう。
悔しい指名漏れ
井上の代名詞である「フルスイング」は、福岡県筑紫野市の二日市ボーイズに所属していた中学3年生時、自然にでき上がった。 「パワーをつけるために1.2キロのバット、500グラムのサンドボールを打ち返す練習を1日500スイングしていました。その練習を繰り返していたら、スイング力がついて、周りから『フルスイングしている』といわれるようになったんです。それまではイチロー選手を目指していたんですが、柳田 悠岐選手(ソフトバンク)に憧れるようになりました」 高校は久留米商に進んだ。1学年上には日本ハムで活躍する古川 裕大捕手、OBには龍 昇之介外野手(白鴎大-スバル)がおり、井上は彼らから様々な打撃技術を学ぶことができた。 「龍さんから教えてもらったグリップの握り方。これがホームランバッターと僕が言われるようになった原点です」 高校通算20本塁打を放ち、井上は福岡大へ進学した。 大学選手権出場・リーグ戦通算9本塁打の実績を引っさげてプロ志望届を提出したが、残念ながら吉報は届かなかった。だが、井上はNPB選手になるという夢を諦めるつもりはなかった。 「大学の同級生に、いまソフトバンクにいる仲田 慶介(福岡大大濠)がいて、一緒にプロを目指していたんです。いつも仲田と『今年ダメだったなら、独立が一番(NPBに)近いんじゃないか』という話をしていました。そんな中でインディゴソックスから話をいただいたので、入団を決めました」 こうして独立リーガーとなった井上。目標は「打率2割5分でも本塁打20本以上」に設定する。