【虎になれ】失策の意味をどう捉えているのか…佐藤輝明にもチームにも意味ある勝利だったかも
<広島1-2阪神>◇3日◇マツダスタジアム 虎党にはこたえられないゲームだろう。いろいろ言われながらも、やはり看板選手として存在する佐藤輝明の2発だけで首位・広島に連勝を決めた。指揮官・岡田彰布にとっても記念星となり、心地いい広島の夜になったのである。 【写真】佐藤輝明の悪送球で出塁される だが、負けていれば、それこそ「これは大変よ」というプレーをしたのも佐藤輝だった。佐藤輝の4号ソロで阪神が1点リードしていた5回2死走者なし。先発・大竹耕太郎は得意の広島打線を相手に初回から1人の走者も出さずに好投を続けていた。 ここで広島の6番・菊池涼介の鋭い三ゴロを佐藤輝はなんとかキャッチ。だが虎党がホッとしたのもつかの間、送球がそれてしまう。これで完全試合はなくなった。佐藤輝は大竹に歩み寄り、何ごとか話す。大竹も笑顔でそれに応えた。 完全試合は消えたが無安打無得点は残っている-。そう思った次の瞬間。矢野雅哉が三塁線を破る適時三塁打を放った。“ノーノー”も消え、これで同点となってしまったのである。指揮官・岡田彰布は「ワンバン放れ言うてんのに…」と失策を振り返った。 だが佐藤輝は直後の6回に勝ち越し5号ソロを放つ。正直、大竹のことを考えれば失策を帳消しにする1発とは言いがたいかもしれない。それでも誰にもできないような活躍でチームを勝たせた。反対に言えば、あの失策がなければ…と思う部分は残る。 「送球がね。ちょっと引っかかったんやね。でも最近、少しずつ球際に強くなってきている。“危ないかな”と思う球でもこなしているやろ。それだけにあれは悔しがっていたね。本人と話したけど『悔しい』って言ってた。そういう姿勢を評価したいと思うよ」 内野守備走塁コーチ・馬場敏史は佐藤輝の失策を振り返って、そんな話をした。キャンプから佐藤輝の守備に付き合う馬場が言うだけに説得力のある言葉だ。正直言って、いかにも「今どきの若者」という佐藤輝は、どこかひょうひょうとしている。 あの失策の意味をどうとらえているのだろう…と試合中に思っていたが想像以上に悔しがっていたのだ。当たり前だけど、やはりいいことだと思う。チームプレーにおける自分のミスの意味を考え、悔しがり、反省する。そこから大きくなるのだ。佐藤輝にとっても阪神にとっても意味ある試合だったかもしれない。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)