岩井明愛「最高の父の日のプレゼントに」姉は父の日、妹は母の日にV 双子姉妹が笑顔の親孝行
<国内女子ゴルフツアー:ニチレイ・レディース>◇最終日◇16日◇千葉・袖ケ浦CC新袖C(6584ヤード、パー72)◇賞金総額1億円(優勝1800万円)◇曇り、25・1度、西の風3・1メートル◇観衆3588人 双子姉妹が最高の親孝行を果たした。岩井明愛(21=Honda)が、今大会3日間を通じてベストスコアの64をマークし、今季2勝目を鮮やかな逆転で飾った。首位と3打差の5位から出て9バーディー、1ボギーと8つ伸ばし、通算13アンダー、203。父の日に通算5勝目を挙げ、常にツアーに同行する父雄士さん(51)に恩返しした。5月の母の日にRKB×三井松島レディースを制した妹の千怜に続いた。次週のメジャー、全米女子プロ選手権(米ワシントン州)でわずかに可能性が残るパリ五輪切符獲得に挑む。 勝利を確信し、岩井明は両手でガッツポーズをつくった。1つ前の組で回っていた佐久間と12アンダーで並んで迎えた最終18番パー5。第2打をグリーン脇のバンカーに入れ、第3打はピンまで3メートルと寄せきれなかった。外せば佐久間、同組の小祝とのプレーオフ突入は確実。そんな時こそ幼少から言われ続けた父の言葉を実践した。「楽しんでプレーしなさい」。“外したら”ではなく“決めれば優勝”。前向きな気持ちで放ったバーディーパットはカップに吸い込まれた。 3打以上の差をつけていた残る最終組を待って、3週ぶり今季2勝目が決まった。一時は2打差に10人がひしめく大混戦も「めちゃくちゃ楽しかった。緊張は少しあったけど、それ以上に楽しかった」と明るく振り返った。7番から4連続、16番から3連続でバーディーと中盤、終盤に畳みかけた。16番パー4の第3打はバンカーから直接決めて伸ばし、大歓声を呼んだ。それでも「テンションはあまり変わらなかった」と終始冷静さは失わなかった。 ただ勝ちたい理由はあった。「千怜が母の日に勝って、去年は悔しい思い(同じく最終日が父の日だった昨年大会2位)をして。最高の父の日のプレゼントになったかな」と笑った。父に黄色のバラを贈るとされるこの日、千怜とともに右腕に黄色のリストバンドをつけた。「(父は)自分たちがプレーしやすいように周りから守ってくれる」頼もしい存在。観衆を味方にノビノビとプレーできたのも、父のおかげと感謝を忘れない。 これで現在43位の世界ランキングは30位台へと上昇し、竹田を抜いて日本勢5番手に浮上する見通し。24日付同ランキングで五輪出場権が決まるが、次週は最も獲得ポイントが高いメジャー大会の全米女子プロ選手権に挑む。全米女子オープンでは笹生が優勝し、30位から6位に一気に浮上。岩井明も、優勝すれば世界のトップ10入りの可能性もある。もちろん困難極まりない道。ただ次の目標を問われると、きっぱり言った。「やっぱりまた優勝したい」。出るからには全て優勝を目指す。米国でも、そばには頼もしい父がいる。【高田文太】 ◆岩井姉妹の父雄士さん(母の日に勝った千怜に続き、父の日に明愛が優勝)「僕も家内もうれしい。世界一、幸せです。胸が苦しかった。勝つ前と、勝った後は苦しさの意味は変わったけど。勝った瞬間からは胸が熱くなった。最後のパットは遠くの方にいて、人垣で見えなかったけど、ガッツポーズしたのは見えた。明愛は身体能力が高くて、千怜は努力家。姉妹が仲良くて、2人で普段から話せるのは大きい」 ◆岩井千怜の母の日優勝VTR RKB×三井松島レディース(福岡・福岡CC)で妹千怜が通算12アンダーで大会2連覇。5月12日の最終日はパー4の9番でグリーン奥のラフからチップインバーディーを決め、最終18番もバーディーで締めくくった。3日間計204ストロークは大会最少記録を更新。母恵美子さんを思い、第1日から姉明愛とともにピンクのウエアでプレーし、優勝をプレゼントした。 ◆パリ五輪への道 6月24日付の世界ランキングに基づく五輪ランキングで出場60人が決まる。各国上位2人に出場権が与えられ、世界ランキング15位以内に3人以上いる国は、最大4人まで出場権を得る。最新の世界ランキング(10日付)で日本勢は笹生優花の8位が最上位で、母の母国フィリピン代表として出場した東京五輪に続き2大会連続出場が確実。19位古江、20位畑岡、21位山下が続き、2番手争いはわずか0・1ポイント以内に3人がひしめく大混戦。ここに42位竹田、43位岩井明が続く。今大会の結果で岩井明が竹田を抜き、日本勢5番手への浮上は確実。岩井明は全米女子プロ選手権で優勝すれば15位以内にジャンプアップすることが決定的で、他の日本勢の成績に関係なく五輪切符を獲得できる。