高まる緊張、創設100年なのに交流なし 中台二つの故宮、台湾側は欧州で特別展も
台北と北京にそれぞれある故宮博物院。北京で創設され2025年で100年になるのを前に、台北の故宮博物院は国際交流を柱とした記念活動の計画案を明らかにした。欧州で特別展を開くほか、2025年大阪・関西万博ではデジタル展示を予定。ただ北京側との交流は一切なく、中台関係の緊張が影を落とす。(共同通信台北支局=渡辺靖仁) ▽名宝「白菜」がチェコに 「台湾の故宮としてだけではなく、アジアの故宮、世界の故宮にしていきたい」。台北の故宮博物院の蕭宗煌院長は、一連の記念活動では過去を振り返るだけではなく、将来を見据え、一層の国際化を目指したいと意気込む。 目玉は欧州での特別展だ。2025年9~12月にチェコ・プラハの国立博物館で、2025年11月~26年3月にパリのケ・ブランリ美術館でそれぞれ開催する。プラハでは白菜をかたどった清朝時代の翡翠彫刻「翠玉白菜」など台北故宮所蔵の名品100点余りを出展する。
台北で2024年6月中旬、チェコの国立博物館との間で特別展に関する協力文書を締結した。海外展では中国が展示品の所有権を主張し差し押さえを求める恐れがあり、締結に立ち会ったチェコ上院のドラホシュ副議長は、1年半かけ差し押さえを免れる法整備を行ったと強調。「(特別展が)2025年に欧州で行われる代表的な文化行事になることを期待している」と語った。 ▽祝賀は中台別々に 日本関連では2024年9月、分院の故宮南院(嘉義県)で「琉球」の特別展を開催する。琉球の歴史文化への認識を深めてもらうのが目的で、沖縄県立博物館などの所蔵品を展示するほか、2025年5月には南院で江戸時代の浮世絵の特別展も開く。 台北故宮は台湾の科学技術の実力をアピールするため文物を3Dで紹介するなどデジタル展示にも力を入れており、大阪万博でその成果を披露する予定だ。 一方、北京と台北の「二つの故宮」は100年の節目を別々に祝う見通しだ。台北故宮は中国歴代王朝の文物など約70万点を所蔵している。多くは北京の故宮博物院など中国本土にあったもので、日中戦争や中国共産党との内戦を避け国民党政権と共に台湾に渡り、一時台湾中部で保管。台北の博物院が1965年に完成し、移された。
二つの故宮は対中融和路線の国民党の馬英九政権下で交流が加速し、2009年には台北で合同展覧会を開催したことも。その後、中国と緊張関係にある民主進歩党(民進党)政権が発足し、本格的な交流が途絶えた。 台北故宮の担当者は「(中台の文化交流は)対等、互恵の原則の下で行われなければならない」と主張し、「一つの中国」の受け入れを迫る中国側との交流は困難との頼清徳政権の立場を繰り返した。