80代ドライバーが高速道路“逆走”33キロ…高齢者運転の“逆走事故割合45%”への対策はある?
過失割合は10対0とは限らない
前出の愛知県の事案では、幸いにも事故が発生しなかった。結果的に、無事故だった80代のドライバーは、どんな罪に問われるのか。 道路交通法(道交法)では一般道や高速道を問わず、左側通行が定められており、右側を通行すれば逆走となり、通行区分違反(道交法8条1項)で、「3か月以下の懲役または5万円以下の罰金」が科せられる。 交通事故の当事者間において、どちらにどの程度の責任があるかを示した割合である過失割合は10対0と思われるが、そうとは限らない。相手側に注意義務違反があった場合は、その程度に応じて過失割合が軽減される。 たとえば、相手方が、早い段階で対向車が接近していることに気づいたにもかかわらず、回避措置をとらなかった場合などは、状況に応じて、過失割合に修正が加えられる。
諸外国の高齢ドライバー対策は?
高齢者による、認知能力低下が原因と思われる事故。もちろんこれらは、日本特有というわけではない。 お隣の中国では、60歳以上は毎年身体検査の受診が義務で、クリアしなければ免許を保持できない。70歳以上は免許取り消しだったが、年齢制限は2020年に撤廃されている。 韓国でも高齢者による事故が多発し、社会問題化。速度や走行時間帯に制限を設ける条件付き免許制度の導入が検討されている。自主返納した高齢者の優遇策を手厚くすることなどで、免許返納促進にも力を入れている。 アメリカでは免許更新時に実車試験を取り入れている州や運転適性に疑義がある場合、第三者が運転免許当局に情報提供する仕組みなどがある。 イギリスでは70歳をひとつのラインに設定。以降は3年ごとに心身の健康を条件に自己申告制となっている。ドイツでは「生涯安全運転」を掲げ、シニアドライバーの安全運転を支援する施策を豊富に用意。国として、高齢ドライバーの事故防止に力を入れている。 日本でも、高齢ドライバーの事故多発を受け、国交省が断続的に対策を検討。逆走事案については、高齢者が多いことを問題視し、ハード面での対策の他、事故発生時のより詳細なヒアリングやより分かりやすい注意喚起の必要性なども議論されている。 飲酒運転では「飲んだら飲むな」のキャッチフレーズが有名だが、高齢者の運転については年齢制限も視野に入れつつ、「物忘れが多くなったら乗るな」といった、厳しめの啓蒙メッセージを真剣に検討してもいいタイミングなのかもしれない。 ちなみに、運悪く逆走車に遭遇したら、どうすればいいのか。NEXCO東日本によれば、衝突回避に努めるとともに、同乗者からの110番、もしくは最寄りのサービスエリア等からの非常電話、料金所スタッフへ申し出てくださいとのこと。通報後は、すぐに情報板やハイウエーラジオで告知されるという。
弁護士JP編集部