東京とパリ…2人の写真家によって編み出された物語、慎ましくも懸命に生きる人々への“愛情と好奇心”
かつて福岡県筑豊地方にあった炭鉱から、写真家としての活動をスタートさせた、本橋成一さん(83)。本橋さんと、フランスの写真家・ロベール・ドアノーの作品を集めた写真展が、田川市美術館で開かれています。 【写真で見る】2人の写真家によって編み出された物語
「勇気を出して撮っちゃおう」炭鉱写真で受賞
かつて福岡県にあった炭鉱の写真を撮影した本橋成一さん。今年、83歳になった本橋さんは、1965年、写真専門学校の卒業制作のため、筑豊文庫の上野英信さんを訪ね、炭鉱の写真を撮り始めました。炭鉱と書いて、「ヤマ」と読む写真で、太陽賞を受賞しました(1968年第五回太陽賞)。50年以上にわたり、揺れ動く社会とそこに暮らす人々の姿を記録してきた本橋さんの写真展が、田川市美術館で開かれています。 写真家・本橋成一さん「当たり前に撮った写真よりか、むしろ勇気を出して撮っちゃおうみたいな、そんな写真が、あとから見るとね、もう少し撮っておけばよかったという」
慎ましくも懸命に生きる人々への愛情と好奇心
今回の写真展のタイトルは、もう一人、フランスの写真家、ロベール・ドアノーの作品と「交差する物語」。1912年生まれのドアノーは、商業写真家として有名ですが、本橋さんと同じテーマの写真が多くあります。これは、ドアノーが、フランスの炭鉱を撮影したものです。第二次世界大戦を経験した2人の写真に共通しているのは、慎ましくも懸命に生きる人々への愛情と好奇心です。 「サーカスはぼくにとって、とっても居心地がいいところだった」 本橋成一 「ときおり、街路で繰り広げられるスペクタクルは楽しい気分に浸らせてくれる」 ロベール・ドアノー 東京とパリ。2人の関心は、大衆の生活の場に寄せられ、失われていく光景とともに、人々の営みが記録されています。 「写真や映像は、相手に対する想いとイマジネーションだ」 本橋成一 「相手をこよなく愛してこそ、写真を撮ることが許されるのだ」 ロベール・ドアノー
2人の写真家によって編み出された物語
本橋成一さん「何回もいくときもあるし、きょういいやってときもありますよね。なんかイマジネーションっていうか、これもう一回見とかなきゃだめだなっていうのもありますし」 来場者「ドアノーさんと本橋さんの着目が似通っていて、ずっと並んでいると、パリなのか日本なのか、あれって感じがしてすごい面白いです」 「生まれては消えていくいのちの中に同じいのち、同じ人は絶対にいない」 本橋成一 「ただ、見ることそれ自体が幸せそのものに感じられる日もある。その喜びがあふれんばかりになって誰かと分かち合いたくなるんだ」 ロベール・ドアノ 本橋成一さん「やっぱり、想像力だろうと思うんですけどね。僕が撮った写真を見ているお客さんがね、ちょっと後戻り、一歩でもいいや、3歩でもいいや、もういっぺん後戻りして見てみたいと思ってるような作品をできるだけたくさん撮れたらいいなと思うんです」 2人の写真家によって編み出された物語は、ユーモアと優しさをもって、生きることの豊かさを教えてくれます。