亡き子は23センチ・393グラム「壊れてしまいそうで抱けなかった」検査陽性なら中絶率が約9割 出生前診断で決断した母の声「選択自体に後悔はない」
■新型検査で陽性が出る割合は1.8%→中絶率は86.9%
出生前診断を受ける人は増えている。NIPT(新型出生前検査)は2013年度から2021年度の9年間で11万7241件を数える。2021年度だけ見ても、1万5577件だ。NIPTは、血液を採取し、3つの染色体疾患の可能性を調べるものだが、陽性が出る確率は1.8%(約50人に1人)。2022年3月まで実施分で、ダウン症の陽性が出たのは1282件だが、その後に妊娠を中断、つまり中絶に至ったのは86.9%だ。 出生前診断を専門とするFMC東京クリニックの中村靖院長は「それぞれ誰でも自分の人生の中で選択はある。誰しも、あの時こっちを選んでいたらというのは持っているはずで、これは出世前診断に限らない」と理解を求めた。検査については「出生前にわかる病気はものすごくたくさんある。同じ病名でも症状に幅があるのは事実。生まれる前に全部ぴったり当てられるかっていうと、必ずしもそうではない」とも述べた。
■「産む・産まない」の最終決定は本人ではなく医師
中絶を選択する上で、制度のハードルもある。1つは金額だ。中村氏は「価格の問題は難しい。本来は多くの人に受けていただくためには価格が下げられればいいが、日本の特殊な事情もある。そもそも海外だと(出生前診断に)お金を払わないようなこともあるが、日本ではそういう仕組みになっていない。日本では今、この検査の位置づけは受けたい人が自分でお金を出す。実は最初に始めた検査が研究目的で、最初は20万円ぐらいした。だんだん下がってきているようだが、検査会社からも『このぐらいの価格でやってください』と医療機関に言ってくる。医療機関もある程度マージンを乗せないとやっていけない」と説明した。 また、さらに大きいのが最終的に「産む・産まない」の決断をできるのが法律上、本人ではないことだ。「一番の課題はそこ。産む・産まないの決定権は、女性が主体的に決めているわけではない。基本的には日本には『堕胎罪』があり、中絶そのものは犯罪という扱い。母体保護法の中で母体保護法指定医が、中絶する要件に当てはまりますと判断した上で、中絶できるようになる人が出るので、つまり中絶を決定するのは医師」。いくら本人が望んだとしても、指定医が要件に当てはまらないとすれば、中絶はできないということだ。 これに、彩さんは「実際、私が産む時に担当をしてくださった病院の先生は、その方の主観だとは思うが、障害のある子どもを育てるのは本当に大変なことだと。育てていくのは本人、家族であり親なので、親の意見というのはすごく大事で、育てる側の意思が最も尊重されるべきであると言っていた」とも加えた。