「軽減税率」3つの観点から見るメリットとデメリット
1月4日に開幕した通常国会では、来年4月の消費税率10%への引き上げに合わせて導入する「軽減税率」法案が焦点の一つになります。軽減税率をめぐっては対象品目が注目されていますが、消費税の中で10%と8%という複数の税率が存在することになります。軽減税率の導入にまつわるメリットとデメリットを3つのポイントからみてみます。 【写真】軽減税率は低所得層の味方なのか?
「消費税10%」「軽減税率」「インボイス」
昨年12月16日、自民公明両党は、軽減税率の導入に合意しました。消費税が10%に上がるタイミングに合わせ、生鮮食品と加工食品(酒類および外食を除く)、定期購読契約を結んだ日刊新聞が8%に据え置かれる対象品目となりました。12月24日には「平成28年度税制改正の大綱」が閣議決定され、軽減税率は政府・与党の基本政策として推し進められます。 軽減税率の基本的考え方は「低所得者対策」です。「大綱」にも冒頭に『消費税率引上げに伴う低所得者への配慮として消費税の軽減税率制度を導入する』と書かれています。 そして複数税率のため、適正な課税が行えるように「インボイス制度」が導入されることになりました。 つまり「消費税10%」「軽減税率」「インボイス」の3つはワンセットということです。この3つのメリットとデメリットを考えてみましょう。
税収は消費税を導入した1989年が最高だった
まず消費税率を10%に引き上げるメリットですが、政府にとって消費税が安定した財源だということが挙げられます。 「所得税や法人税の税収は不景気のときに減少していますが、消費税は毎年10兆円程度の税収が続いており(※注)、税収が経済動向に左右されにくく安定した税といえます」(財務省) 景気に左右されず歳入の見通しが立てられるというのは、予算を扱う立場としてはありがたい税制であるといえるでしょう。ただし、景気への悪影響もあり、消費税収は増えても、所得税、法人税が下がり、全体としては税収減になる点もあります。 1998年の5%時には前年より法人税13.5兆円⇒11.4兆円で2.1兆円減、所得税は19.2兆円⇒17.0兆円で2.2兆円減、消費税9.3兆円⇒10.1兆円で0.8兆円増となりました。全体としては53.9兆円⇒49.4兆円と4.5兆円の減収となりました。 そして2014年に8%に上がった時は法人税11兆円⇒11兆円で横ばい、所得税16.8兆円⇒16.4兆円で0.4兆円減、消費税は16.0兆円⇒16.4兆円で0.4兆円増で、全体としては47.0兆円⇒54.0兆円で7.0兆円の増収となりました。 ちなみに、消費税が導入されたのは1989(平成元)年ですが、その年の税収は60.1兆円で過去最高です。景気の変動や税制の変化もありますが、消費税が導入されて以降、税収が増えていないということは注目に値する点といえるでしょう。 ※注:「主要税目の税収の推移(財務省)」