【侍ジャパン】プレミア12に挑む若き投手陣 なぜ井端監督は「一番驚かされたピッチャー」として北山亘基の名前を挙げたのか?
「これも特訓したというか」 北山は笑みをこぼすと、自身のバックボーンを話した。京都成章高、京都産業大で野球部のキャプテンを務めたことが関係しているという。 「人に何かを伝える時、自分のなかでしっかり噛み砕いて頭のなかでまず理解できないと、たぶん人には伝わらない。人に話す前に、どう話そうかとイメージしてから話すのは学生時代にけっこう訓練されたと思います」 BCエクササイズに軸を置く一方、ウエイトトレーニングもやってみて判断するような姿勢は子どもの頃にさかのぼる。 「中学生くらいから、『全部、原因があって結果がある』という考え方が自分のなかで漠然とありました。何かをモヤモヤした状態でとっておくのが苦手で。『なんでここはこうなっているんだろう?』とか『ここがこうなっているから、こうなんだ』って突き詰めるまで、すっきりしないタイプなので。そういうところはひとつ、今も生きているのではと思います」 ちなみに、学校の勉強は「普通」だったという。 「でも授業やテストはちゃんとやってきました。地頭がいいかと言うと、全然そうじゃないと思うんですけど」 思春期から探究心が強く、論理的に思考して成長してきた。頭を鍛えたからこそ、プロ野球の世界で一目置かれる存在になった。 「本当にそれしかないと思うので。地道にコツコツ。そっちのほうはだんだんうまくなってきたんですけど、技術的なところとか野球面はまだまだ。自分の思考の仕方にまだ追いついてない部分があるので、そこはもっともっと練習して、そのギャップをなくしていかないとなって思っています」 入団1年目にオープナーの開幕投手を任され、クローザーを含め55試合に登板。2年目の途中から先発転向し、3年目の今季は14試合で5勝1敗、防御率2.31。侍ジャパンに呼ばれるほどのポテンシャルを示した。 深く考えて取り組んでいることが、いい方向に進んでいる感覚はある。
「まだまだ全然納得してないですけど、日々変化を感じます。なぜその変化をしたのかまで持っていけるように、自分と向き合って日々過ごしているので。その変化に気づけたっていうことは、また次の変化の予想もできますし。『こういうふうにやっていったらいいのかな』と漠然としたものが、自分のなかで『次はここをこうしたいな』と明確に見えてきました。そういう段階は着実に踏めていると思います」 侍ジャパンで日の丸を背負い、「エース格」と言われる髙橋や才木、戸郷にも負けないような存在感を放っている。連覇を目指すプレミア12で、先発も第二先発もリリーフもできる北山はキーマンになるはずだ。
中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke