過労死防止法、あす成立10年 増える心の病、若者・女性も
「過労死」という言葉を初めて法律に使い、国に対策を講じる義務があると明記した「過労死等防止対策推進法」が成立して、20日で10年を迎える。調査や研究は進んだが、心の病を中心に問題はむしろ広がりを見せる。 【写真】高橋まつりさんの後輩だった息子、5年後に 減らない過労自殺 「いまだ過労死ゼロにほど遠く、若い人の心身が損なわれる事案も増加している」 今月4日に厚生労働省であった「過労死等防止対策推進協議会」。広告大手電通の新入社員だった2015年に自殺した高橋まつりさん(当時24)の母・幸美さん(61)はそう指摘した。 過労死が注目されるようになったのは1980年代後半。日本経済はバブルの絶頂期で、中高年の男性が長時間労働で発症する脳・心臓の病気が問題になった。それが今では、体は比較的元気な若者や、女性を含む心の病(精神障害)が圧倒的に目立つようになった。 ■精神障害の労災認定、20~30代が半数 死亡に至らないケースも含む労災認定の件数をみると、脳・心臓疾患は減少傾向で、22年度は194件(うち死亡は54件)だった。年齢別では40代以上が9割で、男女別では全体の9割超が男性だ。 一方、精神障害の労災認定はほぼ右肩上がりで増加。22年度は710件(うち自殺・自殺未遂は67件)に上り、20~30代が半数を占める。さらに全体の45%は女性だ。 精神科医の天笠崇氏は要因として、長時間労働に加え、様々なハラスメントの顕在化を指摘。「人手不足や経営難など、職場にハラスメントを増やす問題があふれている」と話す。
朝日新聞社