SNSや動画配信で「ドブ板選挙」が様変わり 東京都知事選、先の港区長選で勝因の一つ動画広告がいまや〝政見放送〟に
6月2日投開票の東京都港区長選では、30・62%の低投票率にも関わらず、新人の元区議、清家愛氏が、自民党と公明党の組織が推す現職を破り衝撃を与えた。勝因の一つに、動画広告があったことは意外に知られていない。
選挙での動画広告をめぐっては、昨年4月の江東区長選で初当選した木村弥生氏が後に公選法違反として在宅起訴された事件が記憶に新しい。だが、違法なのは「告示後」に自身への投票を呼びかける動画を〝広告〟で配信したためであり、清家氏の場合は「告示前」の数日間に自身の政策やビジョンを述べた内容を配信した。
動画広告は、港区在住の有権者にターゲットを絞って配信した。再生回数は9万回超に到達し、選対関係者も「選挙初日だけで2桁の女性に『動画を見た』と声をかけられた」と驚く効果だった。
衆参の選挙や知事選と違い、区市町村の選挙では存在しなかった〝政見放送〟として定着しつつある。
今回の都知事選も、告示前に蓮舫氏と石丸氏がすでにユーチューブ広告を配信し、ネットでも前哨戦が繰り広げられている。
選挙の動画利用をめぐっては、4月の衆院東京15区補選で、他陣営に〝凸撃〟を繰り返した「つばさの党」のような問題行為もある。しかし、コロナ禍の巣ごもり生活を機にシニア層でも動画視聴者は増え、有権者のメディア環境は変わった。
今回の都知事選、小池氏や蓮舫氏を「テレビ世代の情報戦巧者」とするならば、石丸氏などの「ネット世代のインフルエンサー」が構図を塗り替えるのだろうか。
【都知事選主な立候補予定者】
小池百合子71 知事 無現
蓮 舫56 参院議員 無新
石丸 伸二41 前安芸高田市長 無新
田母神俊雄75 元航空幕僚長 無新
清水 国明73 タレント 無新
黒川 敦彦45 つばさの党代表 諸新
■新田哲史(にった・てつじ) 報道アナリスト。株式会社ソーシャルラボ代表取締役。1975年、横浜市生まれ。早稲田大学卒業後、読売新聞記者、ニュースサイト「SAKISIRU」編集長などを経て、現在は企業や政治関係者の情報戦対応を助言している。著書に『蓮舫vs小池百合子、どうしてこんなに差がついた?』(ワニブックス)など。