静岡市が清水港に建設予定の海洋文化施設「海洋・地球総合ミュージアム」の完成イメージ。大幅な工事遅れが生じている（同市提供）

　外国の国際クルーズ船が多数発着する清水港・日の出地区に静岡市が建設予定の海洋文化施設「海洋・地球総合ミュージアム」の工事に遅れが生じ、周辺の一体的整備を担うはずの県や民間事業者が困惑気味だ。ミュージアムの敷地に沿って防潮堤の整備を行う予定だった静岡県は細かいデザインは後回し。コンクリート製の軀体（くたい）のみの発注を先行させている。 　「2026年度中の開業を目指す」―。6月定例会で市の担当者は市議の質問にそう答えた。当初は26年4月の開業を予定。市と両輪でプロジェクトを支えてきた東海大と、事業者グループでつくる特定目的会社（SPC）との間で飼育業務など業務委託契約が今も結ばれず、計画は狂いが生じている。展示の方向性を巡り、考え方の違いが出ているとされる。 　「工事の後ろ（完成時期）が決まってくれないと一体感のある整備に踏み出せない」と困惑するのは県の担当者。市側からは海洋文化施設の建物について数枚の完成イメージ図は示されたが、設計図の共有はなし。ミュージアムの正面がどちらかなど最終確定しないまま、防潮堤整備や無電柱化を先行せざるを得ない。

静岡市の海洋文化施設建設予定地（奥の空き地）。県は本年度、予定地沿いの130メートルにコンクリート製の防潮堤の躯体のみ先行整備する＝9月中旬、同市清水区日の出町

　静岡県は「人命にも関わる公共事業なので防潮堤整備を遅らせることは至難」とする。本年度完成の防潮堤（130メートル）は、クルーズ船発着岸壁の玄関口に位置するが、しばらくは灰色のコンクリートだけが置かれることになりそうだ。 　心配する周辺の民間事業者も。エスパルスドリームプラザ運営会社の大井一郎社長（65）は「半年程度遅れるというイメージはある。進捗（しんちょく）を明確にしてほしい」とする。昨秋オープンの新館のテナントには26年4月の完成予定と伝え、入居してもらっている。 　SPCと東海大は展示魚種の選定などを現在進めている最中。市の担当者は「早期に計画を市民に示せるよう全力で取り組んでいるところだ」とした。