〈最高22万円チケットが完売〉井上尚弥は興行としても“異次元”、今や軽量級は「日本が世界の中心」
オイルマネーも熱視線
もちろん、海外からも興行実現に熱視線が注がれる。 熱心なのは潤沢なオイルマネーを持ち、すでに多くのビッグマッチを開催しているサウジアラビアだ。報道では、サウジアラビア総合娯楽庁のトゥルキ・アラルシク長官からのオファーがあるとされる。実際、井上が昨年12月に東京・有明アリーナで4団体統一を果たしたマーロン・タパレス(フィリピン)戦も、中東開催の可能性があったが、現地の情勢悪化の影響で流れたという。 井上の次戦は、9月ごろにWBO、IBF世界1位のサム・グッドマン(豪州)と交渉することが、井上自身の口からネリ戦の勝利後のリングで明かされているが、その後にもう1試合の可能性がある年内には、海外興行の可能性があるという。サウジアラビアの興行が実現すれば、井上の報酬は20億円を超えると見込まれている。 ビッグマッチの実現には、対戦相手も重要な鍵を握る。 そういう意味で、ドーム興行では、悪童の異名を持つネリは「適任のヒール」だった。2017年と18年、元WBC世界バンタム級王者、山中慎介さんとの2度の対戦ではドーピング違反に、体重超過で日本でも大いに悪評を買った。 2戦目後に国内永久追放となっていたが、今回は処分が解除されて試合を迎えた。井上陣営も計量に神経をとがらせ、わずかでも超過すれば試合は行わず、代役選手を用意するほどだった。 今後もグッドマンを筆頭に世界のスーパーバンタム級の実力者が挑む構図になっている。東京スポーツでは、キックボクシングのスーパースターからボクシングに転向したバンタム級の那須川天心(帝拳)も将来的な対戦候補にという記事がウェブ上にもアップされている。 もちろん、まだまだ現実味を帯びている段階ではないが、こうした話題が集まることがボクシング興行のさらなる高まりにつながっていく。井上が見せつけた類を見ない強さと異次元規模のドーム興行が、隆盛が続く日本の軽量級の未来図を一段と明るいものへと変えた。
田中充