知らなかった…年金月13万円“自分の生活で精一杯”の65歳男性、90歳父が「老人ホーム退去」の大ピンチ→“まさかの顛末”に歓喜のワケ【FPの助言】
「サ高住」に潜むデメリット
いわゆる「高齢者施設」にはさまざまな種類があります。今回、Aさんの父親が入居していたのは一般型のサ高住です。入居者は自立している人から要介護の人までと幅広く、主に民間企業が運営しています。なお、部屋は個室で、毎日の安否確認や生活相談といったサービスが受けられます。 入居一時金は10~20万円程度と、初期費用を抑えることができる一方、介護サービスを利用する場合には外部事業者を頼ることになり、利用した分だけサービス利用料を負担する仕組みとなっています。 そのため、Aさんの父親のように介護サービスを受ける頻度が多くなると、その分月々の負担額は増えます。 また、サ高住のなかには“介護型”といわれる、一定の基準を満たした「特定施設」があります。特定施設では、介護度に応じて、定額料金で介護サービスを受けることができます。介護度が上がらない限りは介護サービス費の変動がないため、月々の費用を計算しやすい一方、外部の介護サービスは利用できないという点がデメリットです。 「特養」なら、低負担で介護サービスが受けられる Aさんの父親の場合、現在入居している一般型のサ高住から介護型へ転居しようにも、年金だけでは費用を賄えません。そこで、筆者は「特別養護老人ホーム(以下、特養)」を案内しました。 特養は要介護3以上の人が入居でき、4人部屋などの多床室から個室まで部屋の種類はさまざまです。年金の範囲内で入居できるよう、介護保険負担限度額認定制度や社会福祉法人等利用者負担軽減制度(後述)が設けられています。 特養は人気が高いため施設によっては待機者がおり、すぐに入居できないケースがあります。前払金は不要で、運営は地方公共団体・社会福祉法人が行っています。 高齢者施設にはこのほか、養護老人ホームや認知症を対象としたグループホームなどがあります。
知らなかった…介護費用の負担を減らせる「5つ」の制度
毎月の介護費用負担に悩まされていたAさんですが、実は、介護費用の負担を軽減できるいくつかの公的な制度があります。 1.高額介護サービス費制度 「高額介護サービス費制度」とは、1ヵ月で支払った利用者の負担額が限度額を超えたとき、払い戻しを受けられる制度です。年収約370万円~約770万円の世帯であれば、月額4万4,400円が負担限度額となりますが、住民税非課税世帯は月額2万4,600円が負担限度額となります。 2.高額介護合算療養費制度※ 「高額介護合算療養費制度」は、医療保険と介護保険による1年間(毎年8月1日~翌年7月31日)の自己負担額(合算額)が、各所得区分に設定された限度額を超えた場合に、その超えた額が支給されます。 年収約370万円~約770万円の世帯であれば負担限度額は67万円で、住民税非課税世帯の場合は19~34万円です。 ※ <参考>関係府省提出資料(6/9) (https://www.cao.go.jp/bunken-suishin/kaigi/doc/senmon138shi02_6.pdf) 3.介護保険負担限度額認定制度 介護保険負担限度額認定制度は、低所得者が老人ホームを利用する際に、食費や居住費の負担額を軽減する制度です。 認定を受けるためには、「生活保護を受給していること」「世帯全員が住民税非課税」などの要件があります。また、対象者の資産によっても負担額が変わります。 4.社会福祉法人等利用者負担軽減制度 「社会福祉法人等利用者負担軽減制度」は、社会福祉法人が提供する介護サービスを低所得者が利用する際、自己負担額を軽減できる制度です。対象施設を利用した際の食費や居住費が適用となります。 5.その他自治体独自の制度 その他、自治体が独自に制度を設け、家賃の補助やオムツの支給などを行っています。自治体によって制度の内容や対象となる要件もさまざまであるため、ご自身の自治体窓口やホームページでご確認ください。 FPから一連の説明を受け、上記の制度を知ったAさんは「知らなかった……こんなに便利な制度があったんですね。よかった、なんとかなりそうだ!」と歓喜して帰宅されました。 結局、Aさんの父親は「高額介護サービス費制度」を利用することで自己負担を軽減することができたそうです。また、タイミングよく空きが出たようで、筆者の勧めどおりサ高住から特養へ入所することが叶ったそう。月々の費用も年金の範囲内で問題なく納められるようになりました。 良いことだけが書かれたパンフレットには要注意 慣れ親しんだ自宅から施設へ住まいを移すと、環境の変化やストレスなどから体調を崩し、思わぬ入院や介護が必要になるケースも少なくありません。今回のAさんのように、入所時のパンフレットなどに記載のない費用が発生する場合もあります。 高齢者施設への入居を検討する際には、いま現在は介護が必要なくとも、どのような場合に費用が発生するかよくシミュレーションを行いましょう。 手元の資金が少ない場合には手頃な価格帯の施設が魅力的に思えますが、今回のように介護が必要になった場合負担額が増えるなど、デメリットもあります。 施設ごとの違いをよく把握したうえで、どの施設が入居する本人にとって適切か、医師やケアマネージャーなどの専門家にも相談のうえ、後悔のない選択をしましょう。 武田 拓也 株式会社FAMORE 代表取締役
【関連記事】
- 「いままでありがとうね」年金月7万円、力なく笑う84歳の母…年収490万円、51歳ひとり息子が決断した「本当の親孝行」【FPの助言】
- もう、疲れました…年金月7万円・87歳“寝たきりの母”と暮らす、59歳“元大企業勤務”女性の悲痛な嘆き【FPの助言】
- 年金〈月20万円〉もらえるはずが…65歳夫の急逝で受給額が激減。「もう、生きていけない」憔悴する59歳妻を救った、年金事務所職員のひと言【FPが解説】
- 安くて人気な〈サ高住〉だが…“終の住処”として選ぶには「注意が必要」なワケ
- 退職金2,000万円で「余裕の老後」と思いきや…66歳・元上場企業サラリーマンが定年後、「ジリ貧生活」を余儀なくされたワケ【CFPが回避策を助言】