<城が語る>点差以上の紙一重の勝利。五輪王手も残る不安
紙一重の試合だった。カタールで行われている五輪アジア最終予選の決勝トーナメントの準々決勝。0-0のまま、延長戦に入って、すでに体力を消耗したイランの足がバタっと止まった。90分間続けていたプレッシャーにいけなくなったイランに対して、日本は、最後まで粘り強く走って最後に主導権を握った。 延長前半5分に均衡を破ったのは、右サイドをえぐった室屋のクロスに合わせた豊川のヘッド。後半43分に矢島に代えて投入された選手だ。おそらく矢島の右サイドがずっとやられて押し込まれていたので、そこを止め安定感をもたらすのが目的だったと推測するが、手倉森監督の采配が見事に的中した。GK・櫛引の好セーブに救われながら、さらに勝利を決定的した延長戦後半に入ってからの中島の2点目、3点目のゴールは、素晴らしいの一言に尽きる。 延長後半4分の2点目は、冷静にキーパーの動きを見て、クロスに対応するため少し前に出てきたと判断すると、咄嗟にクロスを上げるのをやめて、一度右へ切り返しDFを交わしてから角度をつけて直接ゴールの右上端を狙った。しかも、無回転。直後に今度は、得意のドリブルで切れ込んで、また無回転シュートを決めた。完全な個の力で、なんとか切り拓いたゴールである。 ドリブルと思い切りが中島の特徴。2つのミドルシュートは、まさに彼の得意な形で、身長は1メートル64と小さいが、体力とパワーがある。大会前に対談企画があって彼と話をしたが、非常に真面目だし、向上心が強く、常に全力プレーがモットーだという。まだ所属のFC東京でレギュラーを確保できていないため、「まずそこから」と話していた。90分間のプレーとなるとムラがあるのが課題だが、現状のA代表にはいないプレースタイルなので、今後の成長次第では、将来、A代表にも入ってくるポテンシャルを持つ。 ディフェンスも前半は、駆け引きをしながら高いディフェンスラインを保ち、コンパクトにカウンターを狙っていこうとする意識が見えた。予選を通じて積み重ねてきた組織的なプレスも部分、部分では機能していた。ただ、ロングボールに対応ができず、中東のチームらしい強靭なフィジカルの前に中盤でガツガツと潰され、セカンドボールを奪えなかった。準決勝に残した課題だろう。