独特な美しさの「第2広瀬川橋りょう」 でも検査は…恐怖心との闘い
仙台市と山形市を結ぶJR仙山線は、仙台市青葉区の陸前白沢駅と熊ケ根駅の間でひときわ高い橋を渡る。1931年に開通した第2広瀬川橋りょうだ。長さは134・4メートル、高さは51メートルもある。 【写真まとめ】高さ51メートル 第2広瀬川橋りょう 「トレッスル橋」と呼ばれる構造で、巨大な脚立のような見た目の橋脚が特徴的だ。同じ構造の橋では2010年に役目を終えた山陰線の余部鉄橋(長さ約310メートル、高さ約41・5メートル)が有名だが、高さでは第2広瀬川橋りょうが上回る。 JR東日本仙台土木設備技術センターの伊藤彰則・上席グループリーダー(43)は、01年の入社から通算して約9年間、第2広瀬川橋りょうの検査や維持管理に携わってきた。「周囲の山の景色に映える橋桁の赤色と、銅材の組み方の美しさは、他にはない」と語る。その独特の美しさと引き換えに、検査では高所での作業が必要で、恐怖心との闘いだ。 法令で定められた2年に1度の検査は、主に目視と、ハンマーでたたいて異音の有無を確かめる方法で点検する。橋桁にある作業員用の通路から、下をのぞき込むこともある。命綱を付けており落下の危険はないが、それでも「怖いものは怖い。安全だとは分かっていても足はすくむ」と打ち明ける。 しかし、怖がってばかりでは仕事にならない。そこで伊藤さんは、一つ一つの動作を声に出して確認することで、心を落ち着けるようにしている。例えば橋桁から下に降りる際には、はしごに手をかける度に「右手よし」「左手よし」と声を出す。これを徹底することで「安全であることを一つずつ確認でき、安心できる」のだという。 伊藤さんは、今は6人の部下をまとめる立場にある。若手社員には「安全を守ることが最優先」と教える。「怖さがあるからこそ、作業を安全にできる。『怖い』というのは大切な気持ちだ」 橋やトンネルなど、伊藤さんは担当する施設を「自分の子供たちのように思う」と語る。「第2広瀬川橋りょうは先人の管理がよく、優秀な子だ。使い続けられるものはとことんもたせたい」。確かな口調からは「地図に残る仕事をしている」という誇りが伝わってきた。【小川祐希】