北大阪の公立進学高・寝屋川が狙ったコールド勝利で8強。今日履正社に挑む
藤原は、「今日は全体的に甘かった。でも明日も同じだと命取りになる。今日みたいな集中力なら20点取られますよ。でも明日は集中します。最高で2点、悪くとも4点に抑えたい」と言う。 実は、プロが注目している履正社のショート、西山虎太郎、4番の白滝恵汰とは、中学時代にヤングリーグで対戦経験がある。「おそらく向こうは覚えていないでしょうが。めっちゃ打たれました」。藤原は、その時、キャッチャーだった。 「打線は強力ですが、荒いでしょう。打倒私学でやってきたから燃えるところはありますが、普通に。強豪だからと意識せず、いつものようにノラリクラリとやりますよ」 履正社戦に必要な心理はよくわかっている。 “満塁弾男”一貫田も「僕らが、5、6点取らないと勝負にならない」と気合を入れる。 「ボールをしっかりと見極めること。ボール球をふらずに有利なカウントを作ることです」 試合後、一貫田は、すぐさま準決勝の組み合わせ抽選会場へ急いだ。 準決勝の相手は、大阪桐蔭と金光大阪の勝者という組み合わせになった。 昨年のセンバツ準優勝チームを倒した次は、春夏連覇を狙う大阪高校野球界の“巨人”大阪桐蔭が勝ち上がっているだろう。今春、あとアウトひとつまで追い込みながら逆転負けを喫して、その王者の底力と、自分たちの甘さを知り、この夏リベンジを誓った相手である。その試合、あとアウトひとつで痛恨のエラーを犯した一貫田は、「大阪桐蔭とやれるなら準決勝でやりたいと思っていた」と、テンションを高めた。 履正社、大阪桐蔭の私学2強を公立の進学校が打ち破れば、大阪の高校野球史をひっくりかえすような伝説のゲームになる。彼らは、練習を午後6時までに制限され、グラウンドも他クラブと共有で満足に使えないという環境の中で、データを分析し、個々が技術を高め、機動力と戦略を磨き、相手の癖を見逃さず、公立という弱者が、私学の強豪に勝つための“弱者の兵法”をこの3年間、積み重ねてきたのである。 戦略家の達監督は、履正社の印象を聞かれ「そりゃあ、もう。センバツメンバーも残っていますし」と苦笑いで絶句するしかなかったが「でも」と続けた。 「野球なんで。正しく攻めれば。絶対はないんです。とにかく大事なのは、藤原の出来も含めた守備、配球、そしてデータ分析です。1日かけて、試合前に生徒に何が提示できるのか、何ができて何ができないのか、をハッキリさせておきたい」 負けたら終わりの一発勝負の高校野球だからこそ、履正社にも言い知れぬプレッシャーと恐怖が生まれる。 相手が公立進学高ならばなおさらである。そこに隙が出る。寝屋川の夏のクライマックスーー。 (文責・本郷陽一/論スポ、スポーツタイムズ通信社)