ガザめぐりイスラエルとイランが戦い合う理由
実際、イギリスとフランスの外務省は、4月12日にイスラエルへの渡航延期勧告を出している。情報が共有されていた傍証である。 イスラエルの防空システムが機能したことも大きい。防空システムとしては「アイアンドーム」が有名だが、このシステムでは弾道ミサイルを迎撃することはできない。今回は、対弾道ミサイル迎撃システム「アロー」が活躍した。 アローは、中距離弾道ミサイルを大気圏外で迎撃することができる。1991年の湾岸戦争でイラクからスカッドミサイルの攻撃を受けたイスラエルが、開発を続けてきた防空システムである。
イランは4月14日の攻撃直後、国連代表部の公式SNSで「イランの軍事行動は、シオニスト政権によるダマスカスにあるわが国の外交施設に対する侵略に対抗するもの」であるとし、この攻撃によって「本件は終結したと見なすことができる」との声明を出した。 そして、「イスラエル政権が再び過ちを犯すようなことがあれば、イランの対応は非常に厳しいものとなる」と述べ、イスラエルに対して報復を控えるようメッセージを発した。
このイランの攻撃は、G7をはじめ世界から非難されるところとなった。イスラエルは「自分たちの方法と時期で必ず報復を行う」と宣言した。アメリカは報復の連鎖に歯止めをかけるよう、イスラエルに自制を求めた。 ■イスラエルが再度イランを攻撃 イスラエルにとっては、イランが大規模攻撃に踏み切ったことにより、世界の世論を味方につけることができた。加えて、反イランという共通項でアラブ諸国との連携も確認することができた。それまで世界に吹き荒れていた反イスラエルの嵐は弱まった。
報復を宣言したとはいえ、思わぬ成果を得たイスラエルは、ここで自制したほうが得策だと筆者は考えていた。しかし中東には中東のルールが存在する。次の攻撃を阻止するために、何らかの対応を取らなければならない。 イスラエルの国是は「全世界に同情されながら死に絶えるよりも、全世界を敵に回しても生き残る」ことだと言われる。世界にどう見られるかよりも、自国の安全は自分たちで守るというのが基本的なスタンスなのである。