堂本剛、退所と共に踏み出す“始まり”の一歩 アーティストとしての自分を諦めない覚悟
「自分が最期まで諦めない」それがひとつの力
もちろんこの決断に至るまでに、私たちには想像もつかないくらい大きな葛藤もあったはずだ。「本当に長い月日をかけて、いろんな方にお話を伺ったり、ご意見・ご指導をいただいたり……(中略)その方々の想いとか言葉とか、いろいろなものも、自分の心に響くものばかり」と、多くの人と話し合ってきた時間を振り返る場面もあった。 先述したように同番組には、堂本剛と共に病と闘うリスナーからのお便りも届く。正直な気持ちを吐露することで築き上げられてきた、堂本剛とファンとの想い想われる関係性。この日も、脳出血で体に麻痺が残りながらも家族が代筆をする形で、80代のファンから届いたメッセージがあった。さらに、高校時代から堂本剛に憧れてきた40代の男性が余命半年を宣告された病床から送られてきたメールもあった。 そのメッセージを読み上げながらこみ上げるものも隠すことなく、言葉を詰まらせながら寄り添っていく。そして、闘病生活を送るリスナーに向けつつも、自分自身に対して言い聞かせるように「自分が最期まで諦めない」という言葉を贈っていたのが印象的だった。自分だけは自分のことを信じてあげること。そして親しい人が愛情をもってさする手当てが、ときに映画や漫画のような奇跡を起こすことだってあるのだと奮い立たせるのだと。 そんな心と心のやりとりを通じて、きっと堂本剛の中に「人生一度きり。自分で自分を労ってあげないといけない」という想いがより強くなっていったのだろう。そして、自分の直感にしたがって一瞬一瞬を紡いでいくことができればこそ、ファンの、そして自身の“命の匂いをプンプンさせる”ことができる音楽を届けられるのだと思い至ったのではないか。誰よりも、堂本剛が“アーティスト・堂本剛”を諦めていない。そんな強い決意に触れられたような気がした。 ■グループでの活動については「解散は考えておりません」 今回の独立によって、大きな注目が集まったのはやはりKinKi Kidsとしての活動についてだ。堂本剛は独立を発表した2月22日付のFAMILY CLUB web内ブログにて「グループの活動をご心配されると思いますが、解散は考えておりません」と明言。そして「僕たちだからこそ描ける笑顔溢れる未来を過ごしましょう」と前向きな言葉を残していた。 一方、相方の堂本光一も同日中に「2人の気持ちとして共通しているのはお互いの気持ちを尊重し合い、2人の活動はこれからも届けていく」と発信し、ファンを安心させた。これまでも、堂本剛の体調を考慮しながら2人で活動を続けてきたKinKi Kids。その苦難があったからこそ生み出された素晴らしい作品や、しびれるような演出もあった。今後、堂本剛が新しいフィールドで個人の活動を続けていく決断をしたことで、“KinKi Kidsとして何を表現していくのか”という解像度がよりクリアになっていくのではないかという期待も高まる。 そんな未来に思いを馳せながら、2人が合作した名曲「愛のかたまり」に〈変わっていく あなたの姿 どんな形よりも愛しい〉という一節があるのを思い出した。そして、このフレーズのあとに続くのが〈この冬も越えて もっと素敵になってね〉という歌詞だということも。もしかしたら大きく環境を変えることで、一時的に冬のような厳しさを感じる場面もあるかもしれない。しかし、2人ならばそんな冬の時期をしっかりと乗り越えて、もっと素敵なアーティストとなっていくと信じている。
佐藤結衣